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心の隙間【チリシィ】 ページ26

「……チリシィ……」


今にも消え入りそうな小さな声で、ボクの名前を呼ぶその子。普段から無口とはいえども、その呼び掛けには一欠片の元気も感じられない。


「はいはい、来たよぉ」


ボクはいつもの様にボンッと音を立ててあの子の前に現れる。そして、自然な流れで空いている膝の上に座ると、その子はボクを抱きしめた。

ここがボクの定位置。 誰にも譲れない場所。


Aが落ち込んでいる理由はちゃんと知っている。

この子は以前から、任務をすぐに終わらせたと思えばここに来る。この噴水広場で待ち続けているんだ……いつまで経っても来ないアイツを。

ボクはそれが気に食わなかった。
何でアイツの為に、Aが悲しまなきゃいけないのかって思ってねぇ。

……でもまぁ、それも良い機会なのかなぁ。


「……大丈夫だよぉ。
ボクはずっとキミと一緒だから」


だって、ボクはこうしてこの子に声を掛けてあげられる。この子の心に染み込める様な、そんな優しい言葉を。


落ち込んだり、悲しい時……人間はその心の穴を埋める為に何かを求める。

それに倣って、この時ばかりはボクを求めてくれているんじゃないかと、ボクの言葉にゆっくりと頷いたその子に対してそんな事を考えていた。


だから、ボクはキミを慰め続ける。
大丈夫だよ。ボクがいるよ……って言って、キミがボクから離れられなくなる様に。


「……今日はもう帰ろうよぉ。日が暮れちゃった」

「……うん」


ぼんやりと街灯が照らされた、薄暗くなってしまった夜の街。
噴水の縁から立ち上がったAはボクを抱きしめたまま、重そうな足取りで帰路へ就く。


「今日も来なかったねぇ。

そろそろ止めようよぉ。Aにはボクがいるんだからさ」


何となくだけど今だ、と思った。

溜息を吐いたその子。
不意にボクがそう提案を持ちかけると、Aは少し悩んだけど……少し笑って自分の額とボクの額を合わせた。


「……わかった。

……チリシィはいなくならないでね。
私にはキミしかいないから」

「キミのことボクは大好きだからねぇ。
だから、ずーっと一緒にいてあげる」


最後にそう言うと、Aはボクをもう一回抱きしめて、小さく「ありがとう」と、呟いた。

心の隙間はこれで完全に埋まった。

息が詰まりそうだ【リク】(リクエスト 過保護)→←井の中のあの子【ゼムナス】(リクエスト)



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設定タグ:キングダムハーツ , ヤンデレ・狂愛 , 短編集   
作品ジャンル:恋愛
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レフト(プロフ) - ご満足頂けたようで何よりです。ソラさんもわざわざこのような小説にリクエストして下さり、誠に有難うございました。 (2019年5月27日 22時) (レス) id: 472b62e3a2 (このIDを非表示/違反報告)
ソラ(プロフ) - 完結おめでとうございます!とても面白かったです!ありがとうございました (2019年5月27日 5時) (レス) id: 788aead105 (このIDを非表示/違反報告)
レフト(プロフ) - ムスメ3さん» 今までのご閲覧、誠に有難うございます。ムスメ3さんから頂いた沢山のリクエストは非常に捗りました。 (2019年5月27日 1時) (レス) id: 472b62e3a2 (このIDを非表示/違反報告)
ムスメ3(プロフ) - すごい面白かったです!完走おめでとうございます! (2019年5月26日 19時) (レス) id: a84e4bce58 (このIDを非表示/違反報告)
レフト(プロフ) - いちごみるくさん» 四ヶ月という時間を掛けて漸く完結致しましたが、初期の方から見て下さったいちごみるくさんには感謝しきれません。今までご閲覧頂き、本当に有難うございました。 (2019年5月26日 13時) (レス) id: 472b62e3a2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:フェトルクス | 作成日時:2019年1月25日 0時

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