センセンフコク(しょうれん←きし) ページ1
«岸side»
「優太、おはよ！」
「俺、優太のこと愛してんで！」
そう言って俺に笑顔を向ける廉は、何よりも誰よりも可愛くて愛おしかった。
『優太』って話しかけてくる廉が、何よりも誰よりも可愛くて愛おしかった。
ボディタッチが激しすぎて鬱陶しく感じる時もあるけど、それでも俺は突っぱねることが出来ない。
それは俺が、廉に恋をしているからだ。
でも廉の瞳に映る人は、俺じゃない。
『愛してる』だの『大好き』だのいつも言う癖に、廉の本当に好きな人は俺じゃないんだ。
無自覚人たらしほど、怖いものはない。
いつもあいつのことを見ていて、あいつもまた廉のことを見ている。
廉が俺に絡んでくる度、あいつがどんな顔で見てるか知ってる？
子供が見たら、ギャン泣きする顔をしてる。
まぁ…完璧なあいつを嫉妬させることが出来て、俺は嬉しいけどね。
「優太！話、聞いとる？」
「え？ごめん、全然聞いてなかった」
「やっぱりなぁ…もー」
そう言って拗ねたような表情をする廉が可愛くて頭を撫でると、嬉しそうな顔をして俺に寄りかかってくる。
「優太が可愛いから、許したるけど！」
「廉の方が可愛いよ」
「へ…？」
目をぱちくりとさせて間抜けな声を出す廉が面白く、思わず笑ってしまう。
本当に愛おしい。
「何や、珍しいな。具合でも悪いん？大丈夫？」
「大丈夫大丈夫。本心だよ」
「…あっそ」
照れてしまったのか顔を隠すかのように廉は俺から離れ、海人に絡みに行こうと立ち上がる。
そんな廉の腕を掴み、俺の膝の上に座らせる。
「ゆ、優太…？」
「廉の定位置はここだろ？」
「優太は今日、甘えたやなぁ！しゃあないから、ここに居る！」
『しゃあない』とか言いながら、本当は嬉しい癖に。
「ちょっとちょっと！今日のきしれん、甘々じゃなーい！？」
「珍しいね？岸くんがベッタリなの」
「生きてて良かったー！写メ撮って良い！？」
「辞めろや、撮んな」
「えー…」
海人はぶつぶつと文句を言いながら、出しかけたスマホをしまい、神に絡みに行った。
「廉ってさ、紫耀のこと好きでしょ」
「好きやけど…？」
「そうじゃなくて、恋愛感情でってこと」
周りに聞こえないように小さい声で言えば、廉は顔を真っ赤にさせて頷いた。
「引いた…？」
「ううん。応援するよ」
「ありがとう！優太、大好き！」
「ヒューヒュー！」
「カップル成立ー！」
海人と神の囃し立てる声と共に、大きな音が楽屋の中に響いた。
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作者名：弥生 | 作成日時：2022年11月13日 12時
