［１０−７］ ページ37
渡辺side
ガシャンッ……！！！
「ああ゛っ！」
派手な音を立てたパイプ椅子が
俺の近くに倒れ落ちた。
その瞬間にも意識が一度遠のきそうになって、
思わず激痛が走った脇腹と左足を庇う。
息が止まるように出来なくて
痛みに大声さえ上げれない。
けれど俺へと近づいてくる戸日野さんの気配。
それが何より怖くて
ギュッと目をつぶった直後。
ブー……ブー……
「っ？！」
「はぁ……っ、はっ」
ドア付近に飛ばされていたカバンから
着信を知らせるように携帯が震えた。
その音に気づいた戸日野さんはハッと我に返って、
呆然とその場を見渡す。
そして小さくため息を吐いたあと、
何処か感情を失ったようにそっと俺に近づいた。
「好きに、上に言うなりしてください」
「……っ」
「それこそ大切なメンバーにでも」
どんよりと曇った目で呟いた戸日野さんは
体を震わせる俺を気にすることもなく
散らばった資料を持って楽屋を出ていった。
気づけばその部屋にはポツンと俺1人。
何が起きたのかさえ分からないまま
取り残された俺は立ち上がることも出来ない。
けれど着信を知らせる携帯は鳴り止まず、
痛む体に鞭を打って、それへ応答した。
「はい……」
『もしもし渡辺くん？
もう30分くらい経ったけど、今どう？』
「あ……はい……」
電話の相手は先程メールを送ってくれた
マネージャーだった。
きっと約束した通りよりも遅い俺を心配して
わざわざ電話をしてくれたのだ。
「すいません。今から向かいます」
『話は？』
「大丈夫です。終わりました……」
『そっか。じゃあ待ってるね』
荒い呼吸を必死で抑えて、
マネージャーとの電話を終える。
それから俺は携帯とカバン、帽子を拾ってから
ゆっくりと立ち上がり、会議室を出た。
歩き始めたら現れる脇腹と足首の痛み。
脇腹はまだ誤魔化せそうなものの、
熱を持ち始めたような左足はヤバそうで
グッと痛みを堪えて歩き続けた。
今は誰にも会いたくない。
もし知り合いなんかに見つかったら
それこそ最悪だ。
そんな一身で目深に帽子を被って、マスクを付け、
ひたすら下を向いてロビーへと向かう。
人通りの少ない廊下を通って
エレベーターの端に乗り込み、
駐車場へ着いたのは何分後ぐらいのことか。
上手く頭が働いてないから分からないけど。
ただ今はさっきまでの実感が押し寄せる度に
しんどくて、黙って奥歯を噛み締めるしかなかった。
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つらら(プロフ) - 春さん» 春さん、コメントありがとうございます！ もう嬉しいお言葉に胸いっぱいです！笑 今はこの作品を完結させることを優先しているのでお時間頂きますが、春さんのお言葉に公開しようかなと甘えて思い始めました！ その時はこの作品共々是非よろしくお願いします！ (2021年3月17日 23時) (
レス) id: d8343dd607 (このIDを非表示/違反報告)
つらら(プロフ) - 青草さん» 青草さん、コメントありがとうございます！ そう言って頂けてめちゃくちゃ嬉しいです！ この先の展開もなかなか都合よくいかない地獄ですが、どうぞよろしくお願いします！笑 (2021年3月17日 23時) (レス) id: d8343dd607 (このIDを非表示/違反報告)
春 - このお話大好きです！いつもドキドキしながら読ませて頂いてます！公開未定の作品があるとのことなのですが、もし主様に少しでも公開したいという気持ちがあればぜひ公開してほしいです！主様の作品どれも大好きなので！！次の更新も楽しみにしてます！ (2021年3月15日 8時) (レス) id: dff8a5af6c (このIDを非表示/違反報告)
青草 - 本当にこのシリーズのお話面白いです！10のシリーズは展開でえぇ！？となりました 次の更新楽しみに待ってますね！ (2021年3月10日 17時) (レス) id: 8f7d50177b (このIDを非表示/違反報告)
つらら(プロフ) - 紫夏さん» 紫夏さん、コメントありがとうございます！ 紫夏さんの予想を裏切る形で驚かすことが出来て良かったです！笑 そして身に余るお言葉ありがとうございます。もっと楽しんで頂けるよう頑張っていきますのでよろしくお願いします！ (2021年3月9日 9時) (レス) id: d8343dd607 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：つらら
| 作成日時：2021年2月21日 1時
