10 ページ10
・
それでも腹痛がひどい日は、たまにある。
「Aさん、お昼休みになったわよ〜」
『、はい』
その日も保健室、ベッドの上で苦しんでいると、
カーテン越しに先生の声が聞こえて、返事をした
また、保健室で半日過ぎてしまった。
自分を責めそうになりながら、起き上がる
一度、先生と顔を合わせようと思ってカーテンを開けた
「あらあら、まだ調子悪そうね」
『そうですね、少し。』
「まだ居てもいいわよ。私、今からちょっと留守にするけど」
「わかりました、」
お大事に、と言ってから、
バタバタと部屋を出ていく、先生
私はまた、唐突にひとりになった。
訪れた静寂、真っ白な部屋
ふわりと息を吐こうとしたその瞬間、
コンコン、と保健室の扉を、ノックする音。
「失礼しまーす。って、まーた先生居ないし、」
直後にそんな独り言を言いながら現れたのは、
またしても、平野くんだった。
その視線が動く、また、私を見つける。
「あ、Aさんだ。また会えたね」
『うん、そうだね、』
柔らかい笑顔、緊張の糸が緩んでいく
平野くんは私の方に数歩近付いてきて、
物理的にも、心理的にも、距離をなくそうとしてきた
「さっきプリントで指切っちゃってさ。絆創膏もらいにきたんだけど。」
『………痛いよね、紙で切るの』
「地味にね。でも居ないから、どーしよっかな。」
平野くんが、首をひねる
勝手にあさっちゃまずいよね？さすがに、なんて、
私の方を困ったように見るから、
私はつい、脇にあった自分のカバンに手を伸ばした。
『………平野くん。』
「ん？」
『…………これ、良ければ使って、』
差し出したのは、私が持っていた絆創膏
君は小さく、えっ、と声を漏らし、私を見つめる
私の方は、少しも君の目を見ることができなかったけれど。
「………いいの？これAさんの？」
『そう私の。もし、よかったら』
「えー、ありがとう！」
君が、本当に嬉しそうにそっと、受け取る
その時にふと指先が触れて、心臓が飛び跳ねた
「マジありがとね。助かった」
『、よかった、』
絆創膏を貼りつける君の動きを、じっと見届ける
君はそんな私の様子を見て、
「ねえ見過ぎだって。笑」
なんて、やさしく笑うの。
やっぱり少しも、目を合わせられなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 919人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
詩愛(プロフ) - みとろちっくさん» はじめまして！嬉しいお言葉ありがとうございます☺️完結させられるように頑張りますね〜！どうぞ今後も楽しみにしていてください♡ (2023年1月12日 20時) (
レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
みとろちっく(プロフ) - はじめまして！一気読みしてしまいました！！この作品もうめちゃくちゃお気に入りです😭😭どうか最後まで完結してくれますように！！とすごい思ってしまって、！笑これからも楽しみにしてます！！ (2023年1月10日 21時) (レス) @page34 id: 36f440d8fc (このIDを非表示/違反報告)
詩愛(プロフ) - みくぽさん» とっても嬉しいお言葉ありがとうございます♡そう感じていただけて嬉しいです。今後も何卒よろしくお願いいたします☺️ (2023年1月9日 19時) (レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
みくぽ(プロフ) - 詩愛さまの丁寧なお人柄が作品の文章にも表れていてほっこりしました☺️今後の展開も楽しみにしております。 (2023年1月4日 21時) (レス) @page30 id: 48277125df (このIDを非表示/違反報告)
詩愛(プロフ) - ゆなさん» ありがとうございます！とっても嬉しいです😭今後の展開も楽しみにしていてください♡ (2022年11月17日 21時) (レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：詩愛
| 作成日時：2022年11月15日 0時
