105 ページ7
・
『ごちそうさまでした、』
「またね、Aさん」
ケーキを食べ終えて、お店を出る
岸さんはあのあと、もう私に話しかけてくることはなくて
私はひとり、微妙な気持ちで扉を閉めた
岸さんと、本当はやっぱり少し、話したかった。
暗くなり始めた街を、ひとりでとぼとぼ歩く
見上げてみたら、夕日が沈むところだった
………私、どうしたらいいんだろう。
深く、大きめなため息をついた時、
「………廉のケーキ、どうだった？」
なんて突然、後ろからあなたの声がして。
反射で思わず振り返るとそこに、
少しだけ息を切らした、あなたが立っていた。
『………岸さん、どうして、』
「話したくて。追っかけてきた」
私を見つめて、そんなことを言うけど、
それって本当に、本心ですか。
『………、』
「で、どうだった？廉のケーキ」
何も答えられない私に、岸さんはまた聞く
それを聞いたところで、何になるんだろう。
珍しく、やけに真剣な目でいるけど、
私はもうあなたが、わからなかったよ。
『………、美味しかった、です。』
どう答えるのが、正解かも知らない
ただもう、どうにでもなれ、って。
投げやりだった。あなたの真意が、見えないから。
私の返事、一瞬細められた岸さんの瞳
だけどあなたは、すぐにまた笑ってみせた
「そっか。それはよかった！マジで」
「廉、どんどん腕あがっててやばいよね」
なんとなく、もやっとした。
海人の時も、そうだった。
私がどれほど他の男の人と居ようと、
どれほど他の男の人の話をしようと、
あなたはいつも、少しも焦らない。気にしない。
そういうところが、いつもいつも苦しい。
『………、』
「廉喜ぶし、また食いに来てやってよ！！」
『、はい』
あなたは、どうなの。
他の人の話ばっかりして、
あなたは私が来るの、嬉しくないの？
にこにこと、いつもと変わらない表情
それが本当に悔しくて、
私とあなたの間にある壁を、また感じてしまう。
すると岸さんは、少しだけ慎重に、
私の顔色をうかがいながら、その口を開いた。
「………つかさ、あのー、Aちゃんは、」
直後、ぽつりと落とされたのは、
「まだコーヒー、飲めねんだっけ？」
一番、聴かれたくない質問だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 486人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「King&Prince」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
詩愛(プロフ) - zzzさん» いつもありがとうございます。いろいろな見方をしてくださっていて本当に嬉しいです…！恋っていいですよね、本当に。最終章も何卒よろしくお願いいたします♡ (2022年6月12日 14時) (
レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
zzz(プロフ) - 詩愛さん、こんにちは。第３章完結、お疲れさまでした。廉くんの一心な思いを受け入れてほしい！と思いつつ、岸君への感情をもち続ける主人公ちゃんの一途さにも心打たれたりして。恋する気持ちって甘酸っぱくてやっぱりいいな。最終章も楽しみにしてます。 (2022年6月5日 16時) (レス) @page50 id: f02299600f (このIDを非表示/違反報告)
伶奈(プロフ) - 詩愛さん» もちろん読まさせてもらいます！💕最後まで岸さんと主人公ちゃんの恋を見届けます♡ (2022年6月3日 17時) (レス) id: 7a01d9d841 (このIDを非表示/違反報告)
詩愛(プロフ) - 伶奈さん» コメントありがとうございます！いつも楽しみにしていてくださっているみたいで本当に嬉しいです…！最終章、公開いたしましたので是非読みにいらしてください♡ (2022年6月3日 13時) (レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
伶奈(プロフ) - このお話めっちゃ好きで続きが毎回気になるところで切られてて早く見たいってずっと思ってます！！次が最終章なのがちょっと寂しいですが最後まで岸さんと主人公ちゃんの恋を全力で応援したいと思います💕 (2022年5月26日 0時) (レス) @page50 id: 7a01d9d841 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：詩愛
| 作成日時：2022年4月13日 19時
