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冬になる。
私はまだ、クラウンに行けずにいた。
大学から帰る時も、
なんとなくクラウンがある通りを避けている
なるべくなら、お店に近付かないようにしていた。
だけどその日は、ぼーっとしていたのか
何も考えずに歩いていると、
足が勝手に、クラウンのある通りに私を導いていた。
やだな、もうすぐクラウンが見える。
久しぶりに訪れたその道
一体いつから、来ていなかったんだろう
ゆっくりと歩いていくと、甘い香りが漂い出す
岸さんの淹れるコーヒーの香りはしなくて、
それすらも私の、涙腺を刺激する
やっぱり、この道は通れない。
戻って別の道から帰ろう。そう思って。
クラウンの方を見ないようにしながら、
進路を変えようとした途端、
「Aさん。」
軽くて少し高い声が、私を呼んだ
その優しい響きに、思わず視線を向ければ、
クラウンのドアの前、
永瀬さんがそこに立って、こちらを見つめていた。
『永瀬さん、』
「久しぶり。今帰り？」
『、はい』
「なかなか顔見ないけど、元気なん？」
『………、まあ、はい』
私の歯切れの悪い答えに、彼は少し笑う
そして、少し離れたところに突っ立っていた私に、
小さく手招きをした。
ぎくしゃくと、鈍い動きで近寄る私
彼はまだ、穏やかに私を見ている。
「Aさん全然来ないからさ、ここで待っとったら会えるかな〜って思って。最近」
『………私のことを、待ってたんですか、』
「まあ、そんなとこ。」
永瀬さんの表情が、柔らかい
微笑む。口角が緩む。
「………なぁ、またお店来てよ。」
『………、』
「これでも待っとるんやけど、俺。」
言われたことがある。
岸さんにも、同じセリフを。
待ってる、って。あなたもそう言ってくれていた。
「ケーキうまいで？今回も割とガチで。」
永瀬さんは、優しい。
答えられない私の気持ちもきっと、
理解してくれているんだろうと、思った。
思えば今の私には、何もなかった。
友情も、恋焦がれる気持ちも失い、
きっともう、ここしかなくて。
『………永瀬さん、また、』
「ん？」
『また私に美味しいケーキ、作ってください』
震える声でそんなことを言えば、
永瀬さんは小さく、わかったよ、と頷いた。
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詩愛(プロフ) - zzzさん» いつもありがとうございます。いろいろな見方をしてくださっていて本当に嬉しいです…！恋っていいですよね、本当に。最終章も何卒よろしくお願いいたします♡ (2022年6月12日 14時) (
レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
zzz(プロフ) - 詩愛さん、こんにちは。第３章完結、お疲れさまでした。廉くんの一心な思いを受け入れてほしい！と思いつつ、岸君への感情をもち続ける主人公ちゃんの一途さにも心打たれたりして。恋する気持ちって甘酸っぱくてやっぱりいいな。最終章も楽しみにしてます。 (2022年6月5日 16時) (レス) @page50 id: f02299600f (このIDを非表示/違反報告)
伶奈(プロフ) - 詩愛さん» もちろん読まさせてもらいます！💕最後まで岸さんと主人公ちゃんの恋を見届けます♡ (2022年6月3日 17時) (レス) id: 7a01d9d841 (このIDを非表示/違反報告)
詩愛(プロフ) - 伶奈さん» コメントありがとうございます！いつも楽しみにしていてくださっているみたいで本当に嬉しいです…！最終章、公開いたしましたので是非読みにいらしてください♡ (2022年6月3日 13時) (レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
伶奈(プロフ) - このお話めっちゃ好きで続きが毎回気になるところで切られてて早く見たいってずっと思ってます！！次が最終章なのがちょっと寂しいですが最後まで岸さんと主人公ちゃんの恋を全力で応援したいと思います💕 (2022年5月26日 0時) (レス) @page50 id: 7a01d9d841 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：詩愛
| 作成日時：2022年4月13日 19時
