33 / 音を拾う ページ34
side M
静かに、今までにないくらい静かに。
優しく、今までにないくらい優しく。
掛けられる4人の声と言葉に、うん、うん、と相槌を打って。
その内容は、あまり脳内には入ってきていなかったけれど。
静かに閉じられた玄関の音が響き渡る家の中で
ソファの上で膝を抱えたまま、顔を上げられずに居た。
脳内にはいろんな何かが渦巻いているのに、
それをキャッチする余力がないらしく、まるで空っぽのようで。
ずっと膝に額をくっつけて
脳だけじゃなく心まで空っぽになったような自分のまま。
気づいたら、日付が変わって朝日まで昇っていた。
「………何時、」
寝たのか寝てないのか、それもわからず
時計を見れば、10時を回りそうなところ。
数時間ぶりに膝から離した額は、ひりひりする。
紅くなってそうだな。
テーブルに放置したままだった携帯が
さっきから、何度もバイブ音を響かせている。
手を伸ばすけれど、少し止まったそれは
心が生んだ、大きな警戒心からのこと。
” 仕事のことだったら ”
「…………っっ、」
携帯に伸ばしかけた、目の前の手が震え始める。
息が苦しい。
昔から単なるよくあるものだと思ってた喉のつっかえに
どうしても意識が向いて、より一層息苦しくなる。
「…………り…っだ、」
僕よりも、いち早く僕のことに気づいてくれた人。
自分のことなのに気づいていなかった僕が跳ねのけたのに
無意識に、彼の名前が口から音となって零れ落ちる。
「潤、」
縋りすぎて、身勝手すぎて幻聴でも聴こえたのかと思うそれは
すぐ傍から降ってきたもの。
どうして？
「…っな、んで…、」
「2時間空き。心配で抜けてきた。
昨日帰るとき、もう一個の鍵借りてくよって言ったんだけど聞こえてなかったんだね」
驚いて顔を上げた先には、眉を下げて、とても優しく心配した顔。
そんなことどうでもいいというように告げられたそれと共に
頬を、指でそっと拭われる。
泣いてないよ。
泣いてないと、思ってたんだけどな。
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ヲ伽 -otogi-(プロフ) - Kazue Akasakaさん» コメントありがとうございます✨『らしい』という言葉がとてもうれしいです、、！楽しんでいただけるようにがんばりますので、ぜひお付き合いよろしくお願いします🥰 (2022年11月24日 14時) (
レス) id: a5fdc137e0 (このIDを非表示/違反報告)
Kazue Akasaka(プロフ) - こちらでのコメントは初めてさせて頂きます。ヲ伽さんらしい繊細なお話で続きが楽しみです。 (2022年11月23日 19時) (レス) @page5 id: fbdba45f48 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ヲ伽
| 作成日時：2022年11月23日 18時
