口癖 -3- (ページ29)

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121 / 鎧を脱ぐ覚悟ページ29

side A

見聞きしていても、咀嚼しなければわからないことがあるから。

このことは、まさにそれだと思うから。

「そうだね、人に会いたくなくて話したくなくて」

「うん。………自分が、嫌になるんだろうね」

あのときの彼からは、それが滲み出ていた。

俺らが知っている彼はそんな様子はなかったから、

初めて見る ”自分を嫌がる彼” に困惑した。

よく覚えてる。

「今の潤くんは、そうじゃないね」

「うん。今のっていうか、俺らが出会ってからずっと」

「…………俺らが知らない世界は、どんなのなんだろう」

汗ばむガラスを眺めながら

静かに、リーダーがそう零す。

「わかんないよな、………わかんなくさせてるのも、性別で区切る世の中で育ってきたからだよな」

酒がまわった彼は、口が達者になる。

今もそうだ。

口が達者になって、つらつらと本音が零れるんだ。

「性別があるからこその楽しさもあるけどさ、ラクさもあるけど」

「そのせいで人の気持ちがわかんないのは、嫌だな」

寄り添いたい。

でも、簡単に寄り添えばいいってもんじゃない。

いつだって自分を魅せて、俺たちならと考えてくれていた彼に

俺らがあらゆる鎧をつけて寄り添うのは、それは違う。

傷つける怖さよりも

傷つける覚悟のほうが大切なときもある。

それはきっと、今だ。