口癖 -3- (ページ26)

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118 / 窮屈な世界はどちらページ26

side S

「……俺らの前でだけ、表舞台と違って別人みたいだと思ってた」

「それは、男らしく居なきゃいけないのを解放したかったから？」

智くんの言葉に続いて質問した俺の言葉を、彼はすぐに拾ってくれた。

でもその瞳は少し、温度が下がっていた。

「僕はみんなに、僕は女です、って自己紹介した？」

「……え、？」

温度の下がった瞳に見つめられて放たれた言葉の意味がわからなくて

少し低くなった声色と相まって、緊張が走る。

「僕は男だとも、男じゃないとも、女だとも、女じゃないとも言ってないよ」

「僕は僕だって、ずっとみんなに魅せて伝えてきたつもりだった」

自分のことに対してはあまり感情を見せなかった彼。

眉間に、皺ができる。

「解放したかったなんてそんなのない」

「僕は女で居たい男でも、男で居たい女でもない」

「相葉くんに天然のキャラがあるのと同じで、僕には男っていうキャラがある」

「だからそのときの僕も僕だよ。みんなの男らしさと女らしさの境界線が、僕にはないの」

” 芸能人だから時間をわけてるだけ ”

彼は最後に、そう言った。

根底が違うと思った。

物心ついたときから性別でわけられている俺たちと、

物心ついたときから性別なんてなかった彼。

でもきっと、

窮屈なのは俺たち側だと

それだけはわかった。