104 / こわい言葉 ページ12
side A
今日は久々の検査の日だったらしく、
病室にひとり取り残された。
14時。
ここまででも、きっと聞くタイミングはいくらでもあった。
それに、聞けば彼は答えると思う。
でもそれでいいのかわからなくて、
彼からを待つべきなんじゃないかと、わからなくて。
「………結果聞くのって……どこだっけ、」
いつも、検査の結果を聞いているらしい場所。
そこへ足を向ける。
何かしていないと、ずっと考えてしまうから。
それならもう彼の傍に居たほうがいいと、逆にそう思った。
何度か入ったそこへ向かえば、”使用中” のプレート。
「………入りづら、」
入ってもダメではないと思うけど。
周りに人も居ないし、別に怪しまれない。
でもどこか躊躇いがある。
扉に近づいて、また離れて。
それを繰り返しているうちに、中から椅子を引く音。
やばい出てくる、と思って咄嗟に隠れてしまった。
これ、
どうすんの。
「心配しすぎだと思うんだけど……数値全然大丈夫だし、」
いつものようにニットストールを羽織り、
それを撫でながら部屋に戻ろうとする彼。
そんな彼の独り言が、静かなこの廊下の空気に乗って聴こえてきた。
「っ、数値ってなに、」
その言葉が脳内で整理されるまえに、身体が動いていた。
知識なんて全然ないくせに、思い込みだけが先走って。
” 数値って、何かの病気？ ”
そんな思い込みだけが、先に。
「……びっくりした、迎えに来てくれたの？」
「……………なんではぐらかすの、」
「ふふ、僕は別にそんなつもりないよ。聞かれたら言うつもりだった」
「でも、記憶…、」
今日初めてスムーズに進んだせっかくの会話が、止まる。
言っていい？
ねぇ、誰か。
聞いてもいい？
105 / その中に在るものを知って→←103 / 聴こえる
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 343人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ヲ伽
| 作成日時：2022年5月22日 18時
