36 / 彼を崩したのは一体 ページ38
_____A.
『リーダーが来るって〜』
その日、午後から仕事だった俺は
潤を俺の家に置いて仕事に向かって。
珍しく巻けてルンルンで潤に電話すれば、そう言われて。
リーダーならいいか、と思って了承して
潤が待つ自宅に車を走らせ、
玄関の前まで行くと。
「あれ、リーダー？」
「あ……相葉ちゃん、」
しゃがみこんでるリーダーの姿があった。
「え、なんで？潤居るよ？」
「あ、うん、電話でそう聞いたんだけど…出てくれなくて、」
困ったように眉を下げてそう言うリーダーに
胸がざわつく。
居留守使う相手でも無い。
潤は、誰かが来る日に出かけたりするような奴じゃない。
「……………ごめんリーダー、今日はキャンセルでもいい？」
「あ……うん、ちょっと飲みたいなって思っただけだから」
「ごめんね？また今度、」
何処か辿々しい様子のリーダーを、
見えなくなるまで見送った。
リーダーが戻ってこないことを確認してから
急いで鍵を開ける。
玄関を開けた先に広がっていたのは
開けっ放しのリビングの扉の向こうに見える、
荒々しく物が散らかった部屋。
「……………っ、」
絡まる足をなんとか動かして、
リビングへ入ると
震えて蹲る、愛しい人。
「…………………潤、」
優しく彼の名前を呼ぶと
恐る恐る顔を上げて
止まらない涙を流す瞳が、俺を捉える。
そっと伸ばされる震えた手が
苦しくなるほど哀しくて。
「……………大丈夫、好きだよ」
その手をそっと握り返し
包むように抱きしめると
ひくひくと震えて、しがみついて泣きだす。
物が散乱した部屋のあちこちに、
アルミの包装から出された抗うつ剤が散らかっている。
今日の午前のあれは、きっと前兆だった。
だから彼を1人で置いて行くのが心配だった。
「…………飲まなくても、生きれるように…なりたかっ…た、」
耳元で囁かれるそれが
ナイフのように心に刺さって。
「………………まーくん…っ、……たすけて…っ、」
″ まーくん ″
″ たすけて ″
彼が初めて俺の名を呼んだときと同じ言葉が
そのときの衝撃を、一瞬にして身体に蘇らせた。
あのとき俺は、
数時間の手術にして、それだけで変わってしまった彼の風貌に
酷く衝撃を受けたんだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 287人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ヲ伽 -otogi-(プロフ) - ふらんどーる@潤くんは天使 さん» いつもありがとうございます！わわわっ、本当ですか…！とても安心しました( ; ; )ありがとうございます´`*！ (2020年5月31日 20時) (
レス) id: a5fdc137e0 (このIDを非表示/違反報告)
ふらんどーる@潤くんは天使 - 新作きたっ！べーこんれたすか...！前回もでしたけど、ヲ伽さんのお話は私のようなそういうのを好んで見ないような人でも見ちゃいますw (2020年5月31日 20時) (レス) id: 8e46670866 (このIDを非表示/違反報告)
ヲ伽 -otogi-(プロフ) - ナナさん» 初めまして！コメントありがとうございます´`*！楽しんで頂けたら嬉しいです(*^^*) (2020年5月31日 17時) (レス) id: a5fdc137e0 (このIDを非表示/違反報告)
ナナ(プロフ) - ヲ伽さん、初めまして！新作ですね！何だか私の好きそうな感じでワクワクしています(*^^*)望遠鏡の外側も素敵なお話でしたからね~(^^)また更新が楽しみです(*´艸｀*) (2020年5月31日 17時) (レス) id: d658bfc4bc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ヲ伽 -otogi-
| 作成日時：2020年5月31日 15時
