「愛」ってなんですか!?【轟焦凍】 (ページ49)

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143. 小さな手紙ページ49

数日が過ぎた＿＿

今朝も轟とAは一緒に登校していた。

しかし、轟の胸中ではずっと複雑な何かが渦巻いていた。

このままでいいのだろうか……いや、Aが見合いをするまでまだ時間は山ほどあるのだが。

時折ふと思ってしまうのだ。

見合いの話がいつ出ようが、その前にいっそ別れてしまった方がお互い楽なのではないだろうか？

Aは未だに恋をよく分かっていない。

もし仮にAが恋をすることが出来たとして、そこに見合い話が舞い込んで来たら、Aは自分の感情を押さえ込んで一生を過ごしていくことになってしまう。

それは酷な話だ。

それなら、恋を知らないままでいい。

その方が、Aも恋を知るよりは気持ちが楽なのではないだろうか？

幸せでいられるのではないか？

本当は、Aに恋している轟も、Aと一緒にいたいのだ。

でも、恋している相手には幸せになって欲しいものだ。

見合いが避けられないのなら、せめて少しでも楽な気持ちでいて欲しい。

Aが心の底から幸せでいる時の顔が見たいのだ。

貴「……あれ？」

下駄箱で靴を履き替えようと、自分の下駄箱の扉を開けたAが、小さく声を上げた。

しかし、それは隣にいた轟もすぐに気がついた。

轟「どうした？」

貴「なんか、こんなものが入ってた」

ヒラヒラとAが見せたのは、小さく折りたたんだメモ帳だった。

パサッと開くと、何やら文字が書いてある手紙らしく、文字の羅列が轟にも見えていた。

貴「今日の昼休み、屋上前の階段に1人で来てください……？」

轟「俺も貰ったことはあるけど、そういう類か？」

貴「え！轟君、貰ったことあるの？じゃあ、何とかなるね！」

え……と轟が口をポカンと開けている間に、Aは手紙を鞄にしまい、上履きに履き替える。

貴「どうかしたの？」

固まってる轟の顔を覗き込むように見るA。

轟「いや……別に」

すぐ目の前に好きな人の顔がある。

それだけで恥ずかしくて、轟は反射的にAから目を逸らしてしまった。

本当は、その手紙が何なのかを説明しなければならないのに。

Aは訝しげに眉をひそめたが、すぐに「ま、いっか」と顔を上げた。

貴「行こ」

歩き出したAの後ろを黙ってついていく轟。

＿＿この時、説明していたら良かったのに。