「愛」ってなんですか!?【轟焦凍】 (ページ27)

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121. 共有出来なかった気持ちページ27

「挨拶がまだだったね。私は、焦凍の姉で轟冬美。いつも焦凍がお世話になっています」

貴「いえ！私は、と……焦凍君と同じクラスの水無月Aです」

轟と言おうとして、Aは慌てた。

ここでは、家族全員轟なのだから。

すると、名前を言った瞬間、冬美の顔が僅かに反応した。

冬「あの……人違いだったらごめんね。もしかして、カグツチの娘さんだったりする……？」

今度は、Aの顔が僅かに歪んだ。

ヒーロー・カグヅチは、本名も公開しているため、自分の名前を言えば疑われるのは当然だった。

しかし、寮生活になってから家系に囚われることもなかったため、すっかりそのことを忘れていたのだ。

前までは言われてもどうも思わなかったが、ここ数週間轟と一緒にいて、自分の溜めていた気持ちを出したことによって、嫌な気持ちが渦巻いていた。

ただ、聞かれた以上は嫌だろうがなんだろうが答えなくてはいけない。

貴「……はい。そうです」

冬「ごめんね。嫌なこと聞いちゃって」

Aの顔で気づいたのか、冬美が申し訳なさそうに言った。

貴「いえ、いいんです。事実ですから」

冬「ううん、いいの。ここでは隠さなくていいよ。個性婚で生まれた人の気持ち、分かるから」

優しく言った冬美に、Aはハッとした。

轟家では、冬美も兄の夏もエンデヴァーの求める子どもではなかった。

今は家族皆よりを戻そうとしているようだが、個性婚で生まれた失敗作としては、Aと同じなのだ。

Aの周りには今まで、個性婚で生まれた人はいなかった。

だから、今まで誰とも共有出来なかった気持ちもここでなら分かってもらえる。

安心して話すことが出来る。

大丈夫だよ、と言われてるようで、Aの目には徐々に涙が溜まって行った。

貴「……はいっ」