【HQ】鈍感少女番外編6 (ページ9)

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そうだ、兵庫に行こう 7 ページ9

『私が家を出る前は、お父さんは私に暴力を振るってた。お母さんが子持ちだって、知らなかったみたいで……』

言いづらそうな優木さんの言葉に、私は思わず俯いてしまった。

優木さんは私が小さい頃に受けたお父さんからの暴力と同じ類のことをされていた。

お父さんが再婚したことで、標的が私から優木さんに移ったんだ。

この話を思い出す度、今でも私は申し訳なくなる。

標的が私に戻るなら、昔に戻るだけだ。

むしろ、この1年が私の中では非日常だったから。

「だったら、私が……」

『絶対にダメ！』

私が何かを言う前に、優木さんが察したのか否定した。

それと同時に、隣でハジメが私の手に自分の手を重ねる。

まるで、私を引き止めるかのように。

『Aちゃん、戻っちゃダメよ。もう自分の家族がおかしかったって、気づいてるでしょ？そのままでいいの。おかしいままでいて。今の生活が普通だって、受け入れて欲しいの』

隣でハジメも頷く。

でも、私が戻らなかったら、また優木さんのところに行ってしまうかもしれない。

誰かがまた被害に遭うかもしれない。

お父さんと会ってケジメをつけられない自分が、とてつもなく嫌だった。

『私としては、早いうちに宮城から離れて欲しいんだけど……Aちゃんにあてがないのなら、私が天奏ちゃんに頼んで探してもらってもいいかしら？』

「は、はい……」

話の展開が早くてついて行くのもやっとだった私は、そう頷くことしか出来なかった。