第81羽 ページ35
.
ショパンより、「ノクターン」。
別名、「夜想曲」。
19世紀を代表する偉大なピアニスト、フランツ・リストはこう言った。「軽いため息が漏れ、あたりを漂っているようだ。 微かな哀しみを感じ、やがて音が甘美な憂鬱の中へと溶けてゆく。」
私にピアノを教えたのはベルモット。
そして、ノクターンはベルモットから教わった初めての曲。
難易度はそれほどでもないけど、弾き方が自由な分、個性が出やすい曲だという。
静かに、そして穏やかに触れる。
ポロンと跳ねる鍵盤に、端っこに置いてあるのには勿体ないくらい鮮やかな音が奏でられる。
『(この曲だけは、楽譜を見ないでも弾ける。)』
目を閉じれば自然と身体が乗り、手が動いていく。ベルモットに抱き締められながら眠った夜を思い出しながら。
『(ねぇ、ベルモット。)』
今もちゃんと生きてる?ジンに殺されたりしてないよね?
この街のどこかに、居るのかな。
『(こんな満月が綺麗な夜は、ちょっとだけ逢いたくなるよ。)』
貴方はもう、覚えてないかもしれないけどね。
________________
_____________
________
コナンside
「どこ行った…」
トイレから戻った俺は、Aさんの姿を探しながら会場を歩いていた。
「ふらふらすんなって言ったのに…」
ふと、会場の一角に人だかりが出来ているのが見えた。どうやら、ピアノを演奏しているらしい。ショパンのノクターンが会場に美しく、でも静かに鳴り響いている。
「なんって美しいんだ……素晴らしい!」
ピアノの方を見つめていた男性が感嘆の声を上げる。
「(ピアノの話か…?それとも…)」
なんだか胸騒ぎがして、人だかりを掻き分けてピアノの方へと足を進めてみる。
「!」
見えたのは予感の通りピアノを奏でるAさんの姿だった。
目を閉じて、思うがままに鍵盤を弾くその姿はどこか哀しいように見えた。音楽に酔いしれると言うよりは、思い出に浸っているような。
「Aさん、ピアノ弾けたのか…」
とても、一朝一夕で出来た技術では無い。何年も習っていたのか?そんな話、聞いたこと無かったけど。
ピアノを弾くAさんが一体、何を考えていたのか。瞳の裏に何を思い出していたのか、俺はお得意の推理すら出来ないまま、Aさんを見ていた。
1714人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
only07(プロフ) - ベルモットとオリヴィアちゃんが幸せになってほしいです……! (1月14日 20時) (レス) @page45 id: 621931103c (このIDを非表示/違反報告)
おかき(プロフ) - 続きが気になりすぎて眠れません🥺更新待ってます!!!! (12月11日 21時) (レス) id: 3161f0695a (このIDを非表示/違反報告)
凛愛(プロフ) - とても好きです…🥹 (11月26日 22時) (レス) @page43 id: f83a603b36 (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - あああああああ好きです (9月16日 19時) (レス) @page45 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
full.(プロフ) - ベルさん» ほんとですか!泣長ったらしいお話ですが付き合っていただけたら嬉しいです!コメントありがとうございます! (6月19日 1時) (レス) id: 73b8919793 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:full. | 作者ホームページ:http://utanai.nosv.org/u.php/hptyomatu/
作成日時:2023年3月10日 20時