広い空の下で～約束～１ (ページ20)

今日:7 hit、昨日:11 hit、合計:88,921 hit

2話ページ20

「ハッハッハ！！エースそんなことしてんのか」

『笑い事じゃないですよ』

「いやいや。笑うだろこんな話。
そっかそっかー」

『？どうかしました？』

「いや、なんでも。エースのことよろしくな。
あいつ口悪いし乱暴だけど、悪いやつじゃねーからさ」

どこか母のような優しい口調でそう言われるとなにも言い返せず、頷くことしかできない。そのことを知ってか知らずか、顔を俯かせるステラの頭を優しく撫でた。

・

───そんな生活が当たり前になり始めたある日。
ダダンさんに頼まれたものを買いに街へ行った帰り道でのこと。

「よお嬢ちゃん。良さげなもん持ってんなぁ」

ここはゴミ山のすぐ近く。こういう輩に絡まれるのはよくあることで、最初はびっくりしたけれど今では慣れてスルーしていた。

まともに話そうとする方がつかれる。逃げるが勝ちって言葉があるけれど、まさにその通りだった。

「ちょうどエースとかいうクソガキに金盗まれたばっかなんだよなァ。ってことでお前が持ってるもん全部置いてけ」

だけどその日は違った。チンピラ達の気が立っていたのである。
話を聞く限り、エースさんのせいらしかった。

「見ろよ嬢ちゃん。この怪我もエースのやつにやられたんだぜ。可哀想だろ？」

「俺はサボとかいうやつだ。だから代わりに殴らせてくれるか？くれるよなァ!!!」

関わっていたのはサボさんもらしい。
支離滅裂なことを言いながら自身の大きな拳を振り下ろす男達を見て心の中で大きな溜息をついた。

こういう時、一番手っ取り早いのは大人しく殴られること。
目立つ傷になりそうな攻撃だけ避け、殴られ蹴られを耐え続けた。早く終われと願いながら。

「嬢ちゃんも不運だなァ！だがそれは仕方ねぇこった！
恨むならエースとサボを恨めよな！」

「違いねェ！アイツらが居なけりゃ嬢ちゃんもこんな目に遭わずに済んだしな！」

「今日じゃなければ俺達も優しかったんだぞ？嬢ちゃんとイイコトできたんだけどなァ」

ゲラゲラと下品に笑う声が不快感を誘う。
失敗した、と思った。大人と子どもじゃこんなにも違うのかと。
石を投げられたことが可愛く思えてくるほど気持ちが悪かった。

「あーいう奴らは存在そのものがいけねェ。
そう思わねーか？あﾞ？」

頭を掴まれ、無理やり顔を上げられる。
その言葉を聞いた瞬間、ブチッと何かが切れる音がした。