是非に及ばず−現代鬼殺隊−【煉獄杏寿郎】

14. 見つけたもの ページ14

病院の中を見て歩いていると、ベッドや医療器具、薬品がまだ残されたままだった。



廊下には古びたベンチが並んでいる。



ここで昔、多くの人々が順番待ちをしていたとは思えないほど狭い。



カラフルなペンキで床に示されているのは各病棟への矢印。



ピンク色の矢印は産婦人科へ。



黄色い矢印は小児科へなど。



薄暗い廊下でカラフルな矢印が場違いに見える。



私はピンクの矢印に沿って歩いてみた。



まるで心霊スポットを一人で歩いている気持ちだ。



廊下を進むと奥に階段があり、その隣には大きなガラス張りの部屋がひとつあった。



中を覗くと小さな箱形のベッドがいくつも並んでいる。



きっと生まれたばかりの新生児を寝かせていたベッドだろう。



ふと、ひとつのベッドに目が止まった。



埃で汚れたブランケットの上に置かれていたものは虹色のペロペロキャンディー。



突然身体に水をかけられたような不気味さに震えた。



ピエロの持っていたキャンディーにそっくりだ。



一歩、二歩うしろに下がる。



煉獄さんにこの事を知らせないと…。



彼と連絡を取ろうと視線を部屋から外すと、誰かが背中を向けて階段を降りていくのが見えた。



男性の警察官だ。



別の捜査チームが来ていたのだろうか。



なぜだろう、見覚えのある後ろ姿だ。



その人は私に気づいていないのか、無言で階段をトントンと降りていく。



「あ、ま、待ってください！」



下には鬼がいるかもしれないのに降りていく男性を見て慌てて声をかけた。



急いで私も階段に向かうと、駆け足で降りていった。



廊下に出ると、警察官はもう廊下の奥まで歩いて角を曲がって行ってしまった。



「ちょっと待って！」



早く呼び止めないと、彼が鬼に襲われてしまうかもしれない。



私も廊下の突き当たりまで走り、角を曲がったその時。



思わず手足がすくんだ。



廊下には誰もいない。



その代わり赤い蛍光灯に照らされた廊下が永遠に続いているように見えた。



私の本能がここは危険だと叫ぶ。



早く階段を登って1階に…。



踵を返そうと振り向くと、目の前にうつむいた女性が1人立っていた。



彼女が顔を上げたとき、私は声にならない叫び声を上げた。



女性の顔は、ピエロの化粧を施した顔をしていたからだ。

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