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彼の胸の中は本当に暖かかった。
私が泣いている間、彼は背中をよしよしと擦ってくれたり、腕を回して抱き締めてくれた。
私もひとしきり泣くと、息も楽にできるし、少しづつ落ち着いてきた。
落ち着いてきたのはいいが、はたと気づいた。
私が座っているのは床ではなく彼の膝の上だった。
さっきまで目隠しをされていたから分からなかったが、私は煉獄先生に横抱きに抱えられるように抱き締められている。
次に芽生えた感情は恥ずかしさだった。
彼は確かにいい人だ。
爽快な人だし、優しいし。
でも恋人でも何でもないのに、こんなにくっついてていいのか。
彼の胸の音が耳元に聞こえてくる。
不思議な気持ちだ、初めて経験したパニック症状はいま完全に落ち着いている。
ここにいれば安心できる、そんな思いになった。
でもやっぱり私は恥ずかしくて黙りこんでしまう。
彼は今何を思っているのだろう。
彼の顔を見たいが、怖くて見れない。
「落ち着いてきたか?」
煉獄先生の穏やかな声に私の肩がピクッと少し動いた。
「ありがとうございます、すみません。だいぶ落ち着いてきました。」
恐る恐る彼の顔に目をうつすと、ホッとしてしまうほどの優しい笑顔で私を見ていた。
「うむ、良かった。」
彼の穏やかな笑顔にきゅっと胸が締め付けられる。
「閉所恐怖症はアイマスクで落ち着くことができる。弟も閉所恐怖症でな、君の辛さはよく分かる。」
聞いたら煉獄先生の弟さんはこのキメツ学園の中等部に通っているとのことだ。
そうだったのか、それですぐ対処できたんだ。
「ネクタイで縛るなど手荒なことしてすまなかったな。」
申し訳なさそうに言う彼。
「いいえ、そんな…。」
クンッと突き上げるような何かが、私の中に芽吹いた。
「私も煉獄先生がいなかったら、一人で閉じ込められていました。」
想像するだけで、恐ろしくなった。
ひとりであの恐怖を味わいたくない。
「先生がいてくれて本当に良かったです。」
そう言って私は自分の言葉に恥ずかしくなり、うつむいてしまった。
彼は黙って聞いていたが、ふっとお日さまのように微笑むと、
「なら良かった。」
そう言って安心したように笑った。
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favo(プロフ) - まゆさん» まゆ様☆ありがとうございます(*´∇`*)嬉しいです。少しずつですが、書きしだい更新させて頂きますね(o^∀^o)またどうぞよろしくお願いします! (2021年9月20日 14時) (レス) id: 8138f7760d (このIDを非表示/違反報告)
まゆ(プロフ) - 続きが気になります!更新楽しみにしてます(*^^*) (2021年9月20日 10時) (レス) id: 3becc2e6ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:favo(ふぁぼ) | 作成日時:2021年9月18日 18時