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彼女は目隠しをされたまま、俺の腕の中に収まっていた。
胸に顔を埋めて背中のシャツをぎゅっと掴み、ゆっくり息を整えている。
「すみません、煉獄先生。」
彼女が開口一番に謝る。
「私、こうなったの初めてで。ご迷惑かけて本当にすみません。」
「うむ、気にするな。落ち着くまでこうしているといい。」
彼女の肩が小さく震えている。
「!…でも、先生まで巻き込んでしまって私、なんだか情けなくて、申し訳なくって…。」
「本当にすみません…。」
彼女は泣き出しそうな声を押さえて、精一杯我慢していた。
「うむ…。」
何となく彼女のことが分かった。
彼女はどうやら責任感が強く、周りに頼らず一人で頑張りすぎる性格のようだ。
毎日仕事をストイックにこなし、それでいて周りにも気を使っていたのだろう。
今まで彼女が疲れた様子を見たことはなかった。
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私は、煉獄先生に迷惑がかかっているんだと思うと、早くここから逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。
もともと小さい頃から良い子で育ち、学生時代も優等生だった。
物事に完璧を求め、こだわりがあった。
早く新しい環境に慣れなければと、とにかく時間を度外視した。
仕事が終わるまでは帰らない。
人と折り合いをつけるため言いたいことは喉にグッと押し込め、大人の対応をする。
マイナスな気持ちは表に出さず、他人に迷惑をかけない。
でもついには私にも限界がきて、閉所恐怖症で精根尽き、今は彼の前で泣きそうになっている。
そう思った時だ。
ふわりと温かな腕が私の頭を包み、はっとする。
「A先生は頑張り屋なのだな。」
煉獄先生が優しく言った。
「君が普段から一生懸命、仕事をしているのを知っている。慣れないことも多いはずなのに、毎日よく頑張っている。」
そう言って私の肩に手を置いた。
そしてそっと私の身体から離れると、ネクタイに手をかけ、ゆっくりそれが上にずらされた。
私の瞳が露になる。
「俺は今日、君とここに閉じ込められて良かったと思っている。そうでなければ、君とこんな話は出来なかった。」
彼の顔が私の瞳いっぱいに映る。
「泣きたいときは泣いてもいい。その時は俺の胸を貸そう。」
太陽のように笑顔で言う煉獄さんの言葉は偽りなく、まっすぐ私に響いた。
私は彼の胸に顔を埋め、今までたまっていた気持ちが溢れるまま、泣いたのだった。
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favo(プロフ) - まゆさん» まゆ様☆ありがとうございます(*´∇`*)嬉しいです。少しずつですが、書きしだい更新させて頂きますね(o^∀^o)またどうぞよろしくお願いします! (2021年9月20日 14時) (レス) id: 8138f7760d (このIDを非表示/違反報告)
まゆ(プロフ) - 続きが気になります!更新楽しみにしてます(*^^*) (2021年9月20日 10時) (レス) id: 3becc2e6ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:favo(ふぁぼ) | 作成日時:2021年9月18日 18時