story8★ ページ10
生きていることを実感した瞬間、じわりと涙が浮かんできた。
「どこが痛いのか?大丈夫か?」
若い男は私の顔を覗き込んでそういった。私は口を開きかけるが………ぎゅっと口を紡ぎ、首を振った。
何故か、声が出ない気がした。おそらく………疲労のせいだとは思うが。目が覚めたとき、意識を手放す前とは比べ物にならないほどの疲労感を感じた。
だが、それが"生きている"という証ならば……私は甘んじてそれを受け入れよう。
「んにしても傷だらけだな………何があった」
私は思わず俯く。澄みきっていた心に、また不安や絶望感が……わずかではあるが戻ってきた気がした。
「無理に言えとは言わない。おい!こいつを運ぶ、その前に手当てをするから手伝ってくれ」
若い男の後方にいたうちの一人が若い男の隣へと立った。そして膝を屈め、私と目線を合わせた。
「少し痛いかもしれませんが、我慢してください」
そういうなり、その人はテキパキと治療を始めた。この人は………医術士だろうか。とても手際がいい……
"っ!"
右腕を治療された時に、激しい痛みが電撃のように走った。私は思わず顔をしかめる……覚悟はしていたのに…………
「右腕の傷が酷いです。今の段階では応急処置で精一杯です、一旦戻って治療するのが良いかと…」
「あぁ、そうだな。よし、こいつを運ぶ!戻るぞ!」
そういうなり、若い男は私を担いだ。その時感じた人の温もりが……私を安心させた。
その温もりに浸り、私は静かに目を閉じた。だけどそれは先ほどとは違う……心地よい眠りだった。
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作者名:セレーナ・ラフィーネ&しろーん x他1人 | 作成日時:2018年2月15日 15時