story44☆ ページ46
まだあんまり時間は経っていないはずなのに、いつの間にか煙はお店のすぐ近くまできていた。
ヴィトル「急ぐぞ」
ヴィトルだって、あのふたりを見捨てようとしているわけじゃない。それでも、罪悪感と別れのさみしさでどうしても足が進まない。行かなきゃいけないのに···。
アリシア「ねえ、ヴィトルならカリナさんのこと無理やり連れてくるくらいの力はあるよね?」
ヴィトル「あいつは今パニックになってる。そんなことして包丁でも持ってこられたらどうすんだ。それに、カリムってやつだってそんなの望んでねえだろ?」
アリシア「うん···」
何度もお店の方を振り返りながら、1歩ずつ山を登っていった。
さっきまでの出来事が、なんだか遠い昔の思い出みたいになって、ぽつぽつと浮かんできた。
アリシア「カルネ、おいしかったな···」
お店の看板メニュー。ハーブは何だったんだろう。
アリシア「あ!!!カルネ!!!」
ヴィトル「うおっ!?びっくりした、カルネがなんだ?」
アリシア「やっぱりあのふたり、助けに行こう!」
ヴィトル「は?バカ、なんで戻ろうとすんだよ!!」
私は今登ってきた道を急いでかけ下りだした。
これなら、救えるかもしれない···!!
アリシア「ねえ、カリナさん!!」
勢いよくドアを開けて叫んだ。さすがにびっくりしたのか、今まで全く動かなかったカリナさんも少しだけ肩をびくっと揺らした。
アリシア「私ね、思い出したの。"お母さんとのつながり"は、このお店だけじゃないよ。ほら、そこにあるじゃない!」
私は、さっきまで座っていた席を指差した。これならカリナさんも動いてくれるはず。だって、カルネは"母からの受け売りの料理"だから···!
アリシア「カルネはカリムくんがいればいつだって食べられる。だから、みんなで逃げよう?」
カリナさんは、やっと顔をあげてくれた。
カリナ「アリシアさん···。ごめんなさい、あたし、何を考えていたんだろう。街がこんなになっていて、お店なんて守れるはずないのに。
ありがとうございます、もう目が覚めました。どうか、あたしも一緒に裏山に行かせてください。あそこなら、おばあちゃん家があるんです。そこまで道案内させてください」
ヴィトル「おう、助かるぜ。よろしくな」
4人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:セレーナ・ラフィーネ&しろーん x他1人 | 作成日時:2018年2月15日 15時