story43☆ ページ45
アリシア「みんな!はやく逃げて!!」
勢いよく扉を開けると、いつの間にか店の中の客はいなくなっていた。机の上には、まだ食べかけのカルネが残ったまま。がらんと静まり返った部屋には、カリム君とカリナさんがただ心配そうに目を伏せて立っていた。
カリム「アリシアさん!無事でよかった、いったい···何があったんです?」
ぱっと顔をあげたカリム君の目は、すこし濡れて静かに揺れていた。
ヴィトル「詳しいことはよくわかんねえが、"魔族"とかいうやつらが暴れている。煙もあがってるし、とにかくここはあぶねえ!逃げるぞ!」
ヴィトルがめずらしくあせっている。なのに、カリナさんはじっと床を見つめて動かない。カリム君は一瞬振り向いて、出しかけていた足をもどしてしまった。
カリナ「でも、あたしは、このお店···」
きつく結ばれていた口がほんのすこし開いたかとおもうと、弱々しい声がこぼれた。
カリナ「守らなきゃ、いけないから···」
ヴィトル「何言ってんだよ、店より命のほうが大事だろうが!!」
カリナ「お母さんの、大事な、お店。たったひとつの、母とのつながりなんです。ここが無くなったら、きっとお母さんとは、もう永遠に会えない。あたしの中にいるお母さんが消えちゃうから···」
カリム「そんなことない!!お母さんなら、きっと空の向こうから僕らを見てる!」
カリナ「空の向こうじゃ、だめなの···だって、そんなの見えないじゃない、会えないじゃない!あたしは、お母さんのお店が好きだった。お母さんの料理が大好きだったの!」
カリム「カリナ···」
カリナさんは動かなかった。まるで、人形になってしまったみたいに。
カリム「あの、せめてお二人は先に逃げてください。お客様を巻き込むなんて、できませんから」
アリシア「そんな!だめ、置いてくなんてできな、」
ヴィトル「いや、悪いけどそうさせてもらおう」
アリシア「ヴィトル!?」
ヴィトル「お前は、ここで死んでもいいのか?」
言い返せなかった。私だってお母さんが大切。それから、あの村のみんなも···。
ヴィトル「俺らはこの店の裏山を越えて隣村に行く···待ってるからな」
そう言うと、ヴィトルは私の腕をつかんでドアを勢いよく開けた。
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作者名:セレーナ・ラフィーネ&しろーん x他1人 | 作成日時:2018年2月15日 15時