少年少女エクスピエート【劣等少女３章】

10. パレード ページ10

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　パレードを待っている二人のうち、先に口を開いたのはネストレであった。

「Aは個人的な事情で王都に来たんだっけ」
「ええ、そうだけど」
「もし、例えばさ、王都じゃなくても幸せになれるとしたら、ここを離れる？」
「どういうこと？」
「いや、何でもない、聞いただけ」

　本当は何か違うことを知りたそうにネストレは言葉を句切った。ちょうどそのとき、荘厳なファンファーレが大通りに響き渡った。音に驚いた鳥が一斉に飛び立ち、そこにいた人々は奏者に注目する。
　大臣である片眼鏡をかけた老紳士が奏者のまあいだから現れ、持っている紙に書かれた挨拶を読み上げ始めた。

「えー、コリスツィア王国の皆さん。本日はお集まりいただきありがとうございます。つきましては、国王の栄光を国内外へ示すべく、毎年恒例のパレードを開催致します。国王陛下が直々に国民の皆様を見て回るという貴重なこの機会、是非国民の皆様にも楽しんで頂けたらと存じます」

　大臣が挨拶を終えるのと同時に、再びファンファーレが鳴り響いた。王宮の方から屋根のない馬車が大通りに向かってゆっくりと進んでくる。馬車には豪華な衣装に身を包み、宝石をふんだんにあしらった王冠を戴いたランベルト王が乗っていた。
　国王が姿を現わした瞬間、人々の歓声が上がった。Aとネストレも感嘆の声を出す。王が乗っている馬車の後ろには音楽隊や踊り子が続いており、見るものを圧倒させるパレードだ。大通りに面した建物の二階や三階からパレードを鑑賞している人たちもいる。

「すごいわね、ネストレ！」
「本当に！ Aと来られてよかった！」
「カリーナは来られなくて残念よね」

　他愛ない会話をした直後である。馬車の方から悲鳴が聞こえてきた。恐怖は瞬く間に伝染し、そこにいる人々は混乱に陥っていた。
　国王の暗殺未遂である。ランベルト王のすぐ横には矢が刺さっていた。騒ぎを聞きつけた衛兵が馬車を囲み、王の救助を行っている。彼らが犯人を捜そうにも、混乱した国民に紛れているため探すことは難しい。

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