少年少女エクスピエート【劣等少女３章】

5. 記念祭 ページ5

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　いよいよ前夜祭となった王都。王侯貴族は華やかなパーティーを開いて明日への期待を高める。王宮からは優雅なワルツと上品な笑い声が響いてた。
　貴族令嬢であるエルシニアもパーティーに参列している。朱い巻き髪に賢き緑の目を持つ淑女は、かつての我儘な態度が一変したことから周囲からの評価は上がっていた。これまでほとんどいなかった同性の友達も増え、充実した貴族生活を送っている。

　豪華なパーティーが開かれている一方で、ヴィオルドは王族の護衛が過ごす宿舎で明日への緊張が高まっていた。しかし彼は不快に感じていなかった。血に濡れた過去の罪悪感を断ち切った彼は、やっと普通の衛兵として働けるのだ。俺も変わったな、とヴィオルドは一人で静かに笑う。その独り言は誰にもとらえられることなく月夜に消えていった。


　そうして迎えた即位記念祭の初日。小さな店から貴族の屋敷まで、あらゆる建物に旗や花の装飾で鮮やかに彩っている。上階の窓から花弁や紙吹雪をまく者もおり、それらが風に乗って空気さえも彩っていた。下では道行く張り切った人々の賑やかな声が王都にこだまして活気に溢れている。広場では軽快なリズムの伝統的な音楽が奏でられ、それに合わせて男女がペアで踊っている。舞ってきた花や紙吹雪は彼らを囲み、エルテブールは歓喜に染まっていた。

　陽歌(ヒラルス・カヌトス)も普段にはない賑わいを見せていた。Aとユリウスは途切れることのない客に目まぐるしく働き、カリーナとネストレは慣れない手つきで一生懸命指示をこなしていく。仕事を覚えた二人でも、身につくまでは時間がかかる。次はこうだ、と考えながらの動作は何度も仕事をしてきたA達よりは遅い。
　それでも働き者のカリーナとネストレは可能な限り迅速に仕事を片付けようとするので店はスムーズに回っていた。

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