君は僕の天使 (ページ16)

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koji side

時々、考えることがある。

“俺はここにいていいのか”

“俺の居場所はここで合ってるのか”

関西から上京して、

俺の生活は一変して。

振付の覚え方すら違ってて。

俺は、足を引っ張ってるんじゃないかって。

そんなことを考える日が多くなった。

『あー…あかん……』

苦しくて、リビングの机に

突っ伏していたら、

「…向井さん？」

Aちゃんの声が聞こえた。

…やば、こんな顔見せられんわ。

少しだけ身体を起こしてチラッと見る。

向『…ん？…あ、Aちゃん、』

でも…

今はやっぱり、元気が出ん……なぁ。

そんな俺を見たAちゃんは

何も聞かずにホットレモンを淹れてくれた。

その優しさに…

甘えてもいいかな…

今だけ…

.

.

「…弱音吐いたって、いいんですよ」

『…え…』

「…悔しいのは、頑張っている証拠だから…
みんな、わかってますよ、きっと…」

Aちゃん…あかん、俺…

.

「…なんて。私なんかが偉そうに言って
すみません…でも…」

　

.

貴女(きみ)のこと……

.

「私は話を聞くことくらいしか
できませんけど、それで心が軽くなるなら…」

.

気がついたら、彼女を後ろから

抱きしめていた。

「っ、向井さん…？」

『ごめん…、少しだけ…
少しだけ、こうさせててくれへん？』

外へ出ていたからか、

ひんやりしたAちゃんの身体からは、

仄かに金木犀の香りがした。