家族 3 ページ3
親父に腹が立って喧嘩を売ってみると、逆上した親父が傍に置かれた煙草の灰皿を掴んで殴りかかろうとした。
俺は反射的に目を瞑った。
ゴンッ!!!!
鈍い音がしたが、俺に痛みはなかった。
不思議に思ってゆっくり目を開けると、目の前には腕で灰皿を受け止めた姉の姿があった。
『は、!?お前!何してんだよ!!』
「A…邪魔をするなら、お前も殺すぞ?」
「良いよ、殺して。でも、それで困るのはお父さんだからね」
「なんだと…?」
「子どもが二人、いきなり学校に行かなくなったら学校側から連絡が来る。隠してもバレるよ、いつかは必ず。そうなったら…」
「……チッ!」
『余計な真似しやがって…。さっさと消えろ』
「うん…」
腕に青痣を作りながらも顔色一つ変えず部屋から出て行く姉に胸が苦しくなったのを覚えてる。
姉は守る対象にはならなかったのに、母よりも細い腕や傷つき続けて袖の長い服しか着て外に出れないほど痛々しい身体を見ると泣きたくなる。
今思えば姉が一番誰よりも酷い扱いを受けていたのかもしれない。
けど、もう全てが後の祭りなんだ。
その一件の数日後、俺たち、兄妹にとって最悪の出来事が起きた。
『母さん…?』
「お母さん?なんで、そんな高いとこにいるの…?ねぇ、お母さん、なんで何も言わないの?」
「………」
『ッ…てめぇ!なんで黙ってんだよ!?母さんが死んだんだぞ!?悲しくねぇのかよ!?』
「……」
『!…もう良い、親父の始末は任せる。合歓、来い』
「…ごめんね」
『謝れば母さんは戻ってくんのかよ…!』
母が亡くなった。
正確には親父を殺して、その後に自ら命を絶った。
俺たちにとってこれが人生の最大の分かれ道だった。
俺と合歓は母さんの遺骨を、姉は父の遺骨を片付けた。
警察には姉が全て説明した。
最後に聞こえた謝罪の声は、掠れていた。
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月乃派 - 泣ける話で私も泣いてしまいました。これからも頑張って下さい。 (2022年1月7日 20時) (レス) id: 2fabf89436 (このIDを非表示/違反報告)
天音 - 泣ける話でした…この世にはいろんな家族の形があります幸せな家族の形のところにはずっと幸せでいて欲しいです悲しい形の家族のところは最後は幸せでいて欲しいですそう思わせてくれるような考えさせられる作品でした!とても感動しました! (2021年10月5日 13時) (レス) @page31 id: 7aaf2735e4 (このIDを非表示/違反報告)
悠希(プロフ) - 泣いた…シリアスだけどやばい。結婚したのは独歩か…? (2021年10月4日 12時) (レス) @page31 id: 4c65d8428b (このIDを非表示/違反報告)
AYA - 初コメ失礼致します。この作品、本当シリアスですね。けれど、話を読み進めていくうちに貰い泣きしそうになりました。「家族」とはどのようにあるべきなのか考えさせられる素晴らしい作品ですね。何度も読み返してしまう程、感動しました。 (2021年9月28日 16時) (レス) id: d783a40920 (このIDを非表示/違反報告)
インクサンズになった(インクめっちゃ推しとインク推しの人) - 涙腺崩壊したんゴ(´;ω;`)時々さまときのツッコミで笑ったのは秘密 (2021年9月26日 2時) (レス) @page31 id: f700950663 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:プルコギ | 作成日時:2021年9月22日 21時