・《 sh side 》 ページ29
．
sho side
あの日から俺はAに連絡ができずにいた。背中を押してくれた柚乃の為にも、言わなくちゃいけないことがあるのに。Aの部屋の前を行ったり来たり、ストーカーかよ俺。
直接会えば何かが変わるような気がして意を決してインターホンを押した。
「どうしたの」と、か細い声が聞こえてホッとした。『出てこれる？……それか入れて欲しい』と言えば「入って」と、快く部屋の鍵が開いて中に入れてくれた。こんなに気を遣う関係になってしまったのは俺のせいなんだろうな。戻れるはずもない過去を悔やんだ。
『この前はごめん』
「別にもういいよ」
『……あのさ、』
言葉が詰まる。
彼女と別れたんだよ、もういつでも会えるよ、俺、ほんとはお前のことが、……言おうとした言葉を全て遮られて伝えられたのは残酷なものだった。
「紫耀には関係ないけど、私、付き合おうと思ってる」
俺が廉と何回か会ってることをAは知らない。
なあ廉、お前本気なんだな。結婚なんてさ。俺なんかより全然進んでんじゃん。俺が知らないところで、２人はいい感じで。俺が入る隙なんて１ミリもなかった。今までの俺なら、『そいつはやめとけ』『早く別れろ』なんて平気で言えてたのにな。
相手が廉だから……いい奴だから……
Aのこと、絶対大事にしてくれると思うから……
何も言えなかった。
……幼馴染なんて、こんなもんなのかな。
分かっていたくせに、目の前の現実を受け止めきれていない俺がいた。
報われない片想いなんて、するだけ無駄なのかな。
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 552人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「永瀬廉」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
こころ(プロフ) - もう泣いちゃいます…すれ違ってばっかりで苦しいです…主人公と紫耀くんがハッピーエンドになりますように。いつも素敵なお話ありがとうございます！Twitterの方でも毎日更新あるか通知いれてるのに見に行っちゃいます…大好きです！ (2021年2月24日 21時) (
レス) id: f2c5e943bf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：詠夢
| 作成日時：2021年2月23日 14時
