2話 この感情は__ em side ページ4
ｴﾐ「ゾムさん、かぁ……………」
久しぶりに外出したあの日。
あの日から、私はあの人の事を欠かさず考えるようになっていた。
優しかったのだ。あの声が、瞳が。
ｴﾐ「…………………はぁ」
書類が全く捗らない。こんなこと始めてだ。
……………気晴らしに外でもいくか
背伸びをし椅子から立ち上がると外服へ着替え外へ出る準備をした。……………のだが
ｴﾐ「………………うわ雨降っとる……最悪や」
生憎外は雨空。止めどなく聞こえてくる音に耳が痛くなり玄関扉を閉めようとする。
ｴﾐ「……………外は行けへんな」
やっぱり外出はやめとこう
「ブーーン……っ！？…わぶｯ！」
ｴﾐ「…………？」
突然目の前を通った人が勢いよく顔から滑った。
大丈夫か、と思いつつ驚いて後ろへ後ずさりしてしまった。
というか、この顔、…どこかで見たことがあるような気がしてならない。
ｴﾐ「あ、あの……大丈夫…で、すか………？」
ソッと手を伸ばす
「…………あ、…すみません平気っす。……………………うわ恥ずかし」
ｴﾐ「……ん？」
「………………あれ？」
ｴﾐ「もしかしてゾ、ゾム………………さん。です、か？」
ｿﾞﾑ「あ、あなたはこの前の！……………名前なんですか？」
ｴﾐ「あ、…エーミールです」
ｿﾞﾑ「エーミール……なら、エミさんやな！」
ｴﾐ「……………え？」
ｿﾞﾑ「あ………すみません馴れ馴れしかったっすかね」
ｴﾐ「い、いえ………むしろ嬉しいというか……いやなんでもないです」
ｿﾞﾑ「？そ、っすか…………でもまた会えるなんて奇遇ですね！俺ら運命かもしれんな」
ｴﾐ「そう、ですね」
ｿﾞﾑ「？どうかしたんですか？」
ｴﾐ「………………………。あの、一度家………入りますか…。その、外雨降ってますし寒いですし」
ｿﾞﾑ「いいんすか？！」
彼は目をキラキラさせ嬉しそうに頬を緩めた。
やめろそんな目で見るな
ｿﾞﾑ「エミさんって優しいですね！」
ｴﾐ「ありがと……ございます……」
そういうあなたの方が優しいのに。
ｴﾐ「お風呂………つかって……ください。服、用意しときます……ので」
ｿﾞﾑ「ありがとうございます！」
ｴﾐ「い、いえ……」
優しい、か
ｴﾐ「こちらこそ、ありがとうございます。ゾムさん」
そう言うと、はにかむようにして目を細めた。………やっと、笑えた。
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作者名：清水・透 x他1人 | 作者ホームページ：
作成日時：2021年8月9日 19時
