朱の檻に囚われし者 (ページ3)

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昔のお話3 ページ3

あの後、私は売り飛ばされた窃盗団『イーヴル団』で仕事をこなす為のスキルを身につけさせられた。
そこでは決して豪華ではないものの毎日食事にありつく事が出来たし、盗みの腕が良かったため暴力を振るわれることもなかった。以前よりもいい環境で生活を送ることができたのだ。

そんな生活を2年程送ったある暑い日の夕方。

「お嬢！今日からこいつらはお前の仲間だ、面倒見てやれ」

そう言って連れてこられたのは自分と同じ位の年齢の性別も出身もばらばらな子供たちだった。

「お前のお陰でこのイーヴル団もここらでその名を知らない者はいないくらい有名になった...だが、俺達はイギリス全土に名を知れ渡らせる程の一味になる。こいつらはその為の人員だ。色々教えてやれ」

恐らく私と同じ様に親に売られてきたであろう子供にこの一味についての説明をしてやる。そして頭が用意した大部屋に案内した。その間終始泣いている者も入れば近くの子としっかりと手を繋ぎ身を寄せ合う者もいた。

「ねーねー！貴方は？貴方はずっとここで過ごしてるの？名前は？私はリリー=ボールドウィンよ」

多くの者が怯える中1人だけ私に話しかけてくるやけに明るい女の子がいた。

『私は2年位ここにいる。名前...名前はない。ただ、お嬢って呼ばれてる。泥棒猫とも...』

「泥棒猫って！まさか最近よく見かける手配書にある泥棒猫！？」

『多分それ』

「びっくりしたわ。あの泥棒猫が私と同じ位の女の子なんて！それにしても名前がないと呼ぶのに困るわね…」

それから暫くブツブツと独り言を呟いて「これよ！」と叫んだ。

「キティ！キティっていうのはどうかしら。泥棒猫から取ったの、子猫って意味よ。可愛らしいあなたにぴったりだわ」

『貴方が呼びやすいなら何でも...』

「なら決まりっ！それと私は貴方じゃなくてリリーよ。覚えてちょうだいね」

その女の子____リリーは他の子が泣き疲れて寝た後も暫くの間私に話しかけてきた。今までは話すと言っても頭に連絡事項を聞くくらいだったので人とはこんなに喋れるものなのだと思い知らされた。