30.欲深い願い ドラコside ページ30
天文学の授業は深夜帯に行われる―
「エリダヌス座は、星座には珍しく川の名前が付いています
α星はそこに見えるアケルナルです。」
シニストラ先生が望遠鏡を覗き、そう説明する
「(寒そうだな…)」
ここはホグワーツで1番高い天文塔の屋上
まだ2月で夜風は冷えるのに、なんでクロウは
防寒具を身に付けてないんだ、と僕は心配になる
屋上はそこまで広くない為、
各寮の中でも何組かに分かれて授業を行う
だから、今はセオドールやパンジー、ホワイトレースはいない
ｽｯ
『ドラコ…？』
先生の目を盗んで急に隣に来た僕に少し驚くクロウ
ﾌﾜｯ
「全く…風邪を引いたらどうするんだ」
僕は自分のマフラーを取り、彼女の首に巻く
寒かったせいか、鼻の先と耳が赤くなっている
『寮に忘れちゃって…ありがとう、ドラコ』
あったかい、と眉を下げて笑うクロウ
僕のマフラーに顔の半分を埋める彼女が
とても可愛らしくて、僕は自然と微笑んでしまう
「それでは、エリダヌス座を星図に書き足してください」
その指示で皆が羊皮紙に書いていく―
ｽﾗｽﾗ
「(そう言えば、僕の星は夏の星だったな)」
ふと、クロウが図書室で嬉しそうに見せて来たのを思い出す
あの時、僕の名前を笑ったウィーズリーに対して
クロウは怒ってたんだっけ
「(夜空がそのままそこにあるみたいだ…)」
星を観察しているクロウに思わず見惚れてしまう
彼女のサファイアブルーの瞳に星がそのまま映っているのだ
「(綺麗だ)」
そんなことを思っていたら
クロウがこちらを見て目があってしまう
『ドラコ、どうしたの？』
私がマフラー借りちゃったから寒いよね…と聞いてくる彼女
夜空を見る君があまりにも綺麗で見惚れてた、
そう言えたら君はなんて返してくれるんだろうか
「あぁ、手がちょっと悴んでしまって」
誤魔化す様に少し冷えた手を彼女に見せる
ｷﾞｭｯ
『どう…？あったかいかな？』
クロウがその手を握って来た
彼女の手は暖かくて、善人は手まで暖かいのかと思ってしまう
「ｯ…あったかいよ、ありがとう
このままにしてても良いか？」
『うん、良いよ』
夜で良かった、と思う
赤くなった耳、緩んだ口元があまり良く見えないだろうから
ｷﾗｯ
『ねぇ、ドラコ。あれ、流れ星じゃない？』
願い事しなきゃ、そう言い目を瞑る彼女
「(クロウの好きな人が僕であります様に)」
好きな人がいるらしいという噂を聞いたから
僕は欲深い願い事だな、なんて思いながら願う―
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作者名：戯言。 | 作成日時：2021年12月20日 21時
