Per mare per terram -アズカバンの囚人- (ページ11)

今日:6 hit、昨日:5 hit、合計:57,345 hit

11.開心術① ページ11

『ハグリッドの事ね？』
グリフィンドールのテーブルの席に着き、
ロンの隣に座るクロウ
向かい側にはハーマイオニーとハリーがいる

「えぇ、マルフォイのお父さんカンカンでしょ？」
ハーマイオニーは肩をすくめる

『そうね、ルシウスは怒ってたわ
でも、大丈夫よ、何とかなるわ』
クロウはそう言い、ハーマイオニーに笑い掛ける

「君のその自信は何処からくるんだよ」
ロンは眉を顰める

『ドラコと話したの、そしたら
彼が直接お父上に話をしてくれる、って』
だから、大丈夫よ、とクロウは微笑む

「マルフォイが？」
ロンとハリーは驚きのあまり目を見開いている
彼が人を思いやる様な人だと思っていないからだ

「そうなの、なら安心ね」
何かを納得した様な顔をするハーマイオニー

『それで、話したい事は別にあるんでしょう？』
本題は何？、とクロウは3人に問いかける

「あ、あぁ沢山話したいことがあって」
ハリーはハッと思い出した様に話し出そうとする

ﾁﾗｯ

『ハリー、ストップ。嫌だと思ったら言ってね？』
時計を見て、午後の授業開始まで時間が無い、と
思ったクロウはそう言い、ハリーの目をじっと見つめる

すると、ここ最近の沢山の記憶が流れて来る―

おばさんを風船の様に膨らませた事
その後公園で黒い犬を見かけた事
ナイトバスに乗って濡れ鍋へ行った事
魔法大臣や教科書の事、アーサーから聞いた事
ホグワーツ特急の中で吸魂鬼に襲われた事

『んー色々あったのね…』
いくつか気になる点があるけれど、と
クロウはハリーから目を逸らす

「…？」
一方ハリーは何か覗かれた様な不思議な感覚になっていた

「クロウ、貴女…開心術が使えるのね？」
『えぇ、生まれつきね
でも、普段は使ってないから安心して』
あっけらかんとそう答えるクロウに
ハーマイオニーは何も言えなくなってしまう
生まれつき当たり前にできる事を制御する事が
どれだけ大変か、そう考えたら言葉が詰まってしまったのだ

「私、貴方は生まれつきの天才で
努力とはかけ離れた人だと思ってた…」
クロウの優しさは憐れみでは無くて、
心の底から滲み出たものなのだとハーマイオニーは納得する

『ハーマイオニー程は努力してないけれど
貴女は頑張りすぎよ
私に勉強教えてもらうんじゃなかったの？』
そう言い、少し泣きそうな顔をする
ハーマイオニーの頭を撫でるクロウ
彼女は今、全科目受けている為、自分の中で
知らない内にキャパオーバーを起こしてしまっていたのだ