5 ページ5
「まあ安心してよ。別れたあとも気まずくなったりはしないようにするって」
封を開けたまますっかり忘れてたさきいかを一本つまみながら言えば、大ちゃんはまたちょっと難しい顔。
「あれ、信用できない感じ?」
「ちげーよ。そこはね、いのちゃんだから上手くやるってことは分かってますよ。でもさあ、なんだろな……。んー、告られたのいつって言ってたっけ」
「三日前」
「そう、そこ!」
ちょっとやめてよ、ビーフジャーキーで人の顔ささないで。
干し肉独特のにおいに顔をしかめるおれをよそに、大ちゃんの弁には熱が入っていく。
「付き合って三日で別れたあとの話するってどうなのって話よ!」
「いやでもそこはもう今さらじゃん。おれだし」
「分かってる!分かってるけどさあ!ちょいと聞きなさいって!」
「はいはい」
だめだこりゃ。
おれの話は聞く気ないな。
とはいえ大ちゃんがおれを雑に扱うのはいつものことなので、大して気にもしない。
お酒もそこそこ飲んだし、宅飲みの開放感もあるし、そろそろ持論を披露したい頃合いなのかな。
大ちゃんの意見は役に立つ時と、聞いた時間すら無駄になる時が半々。
だからおれもちびちびチューハイを飲みながら、話半分に耳を傾ける。
「いのちゃんさ、彼女はいたけど男と付き合うの初めてでしょ?」
「うん」
「ほら、もうひと味違うじゃん!」
「ひと味違う……?」
「しかも相手は誰!ほらっ、言ってごらん!」
「……山田涼介」
「そう、山田涼介!うちのエース!これマメね」
「豆知識ではねーだろ」
「で、その山田涼介の作詞曲といえば!はい!」
「真紅とかキャンドルとか、あと、」
「そしてその歌詞に共通するのは!?」
「最後まで聞けよ……」
「共通するのは!」
もう全然聞かないし。
えー。山田の作詞した歌詞に共通するもの……?
なんだろう。
「めちゃくちゃ重い、とか」
「大正解!」
大正解かよ。
おれが言えた義理でもないけど、大概失礼だな。
大ちゃんの足下に転がった大量の空き缶をぼんやり眺めつつ、ディスられまくるおれの恋人にちょっと同情する。
「重くて執念深くてねちっこい、これが我らがエース」
「そこまで言ってないからね、おれは」
「そしてそれがいのちゃんの恋人になったんだから……」
そこで無意味な溜めを作ってから、大ちゃんはぐっとおれに顔を近付け、謎のウィスパーボイスで囁いた。
「そう簡単にふってもらえると思わないほうがいいよ」
827人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「Hey!Say!JUMP」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ひとみ(プロフ) - 泣くないのちゃんもこれも大好きすぎて3ヶ月に1回くらい読みにきてます笑 この続きもめちゃくちゃ気になるので続きをお願いします!! (2021年11月27日 17時) (レス) @page36 id: e39657dd30 (このIDを非表示/違反報告)
荒川 - めちゃくちゃ好きです!!!続きをお願いします泣 (2021年10月26日 5時) (レス) id: f6705dec1d (このIDを非表示/違反報告)
inuneko(プロフ) - どうしよう!キュンキュンしすぎて叫び足りないんですけど!好きです!あと10回見てきます!!*\(^o^)/* (2020年2月6日 23時) (レス) id: 8271c7e9a0 (このIDを非表示/違反報告)
うさこ(プロフ) - こんばんは。いのちゃんが山ちゃんを好きになってる感じでニヤニヤしちゃいます。早くいのちゃんが恋に気付くといいなーと思ってます。 (2020年2月6日 23時) (レス) id: 1d86e2ca18 (このIDを非表示/違反報告)
あまなつ(プロフ) - さくさん» コメントありがとうございます。楽しんでいただけてなによりです!これからも更新がんばりますね! (2020年2月6日 22時) (レス) id: 8c441c3d0c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:あまなつ | 作成日時:2020年1月5日 12時