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けっきょくそのあとも、山田は飲み会がお開きになるまでおれにぺったりくっついてた。
「うわあ…山田べろっべろじゃん」
二次会に行く人と、このまま帰る人。
自然と二手に分かれていく人波のなか、山田をくっつけたまま立ち尽くしてるおれのところに大ちゃんがやってきた。
「飲まされちゃったらしいよ」
「そんで理性失っていのちゃんにひっついてんの?本能丸出しじゃん」
「いや言い方……こら山田、大ちゃん威嚇すんなって」
「本能丸出しっていうか、もはや野生だ…。森へお帰り…」
「自然に解き放とうとしないであげて。てかマジでこれどうしよ」
タクシーに乗せようにも、1ミリの隙間もなくくっついてるから、どうにも上手くいかない。
そうこうしてるうちに帰宅組はどんどんタクシーに乗り込んでて、うかうかしてると取り残されそう。
「いのちゃんちに連れて帰ったら?」
「…やっぱそう思う?」
「てかこの状態で他の人にお任せしたら、いのちゃんとのアレコレ全部ぺろっと喋りそうだよこいつ」
「そうなんだよ〜…」
酔っ払いのたわ言と聞き流されればいいが、そうとも限らない。
困ったもんだよ。
ため息ついて山田を見下ろせば、「どしたの?」って子犬みたいな目で見上げてきた。
へら〜っと締まりのないアホ面だけど、全身でおれのこと好き好きビームめっちゃ送ってくる。
「もー……連れて帰るわ。空いてるタクシーまだあるよね」
頭をかきながら観念すれば、何故か大ちゃんはちょっと嬉しそうに笑って、「待ってて!1台まわしてもらう!」ってぶんぶん手を振った。
声も動きもデカいよ大ちゃん。
だけど、そのおかげでタクシーはすぐ気づいてくれて、運良く他の誰も乗せてない1台がこっちに来た。
「ほら、山田。乗って」
「……いのおちゃんは?」
「一緒に乗るから」
一瞬浮かんだ不満そうな顔が、すぐにぱって明るくなる。
うん、ってうなずいた山田が後部座席に乗り込んで、その隣におれも乗った。
「ね、どこ行くの?デートすんの?」
「どこも行かねえよ。家に帰んの」
「えー…」
まあでもあんたと一緒ならいっか、って笑う。
酔った山田ってほんとめんどくさいんだね。
おれ、初めて知ったよ。
でもきっとまだまだ知らないことばっかでしょ。
山田がどんな風に恋をするのか、少しだけ、もっと知りたいな、って思ってるかもしれない。
……ほんとに、少しだけね。
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ひとみ(プロフ) - 泣くないのちゃんもこれも大好きすぎて3ヶ月に1回くらい読みにきてます笑 この続きもめちゃくちゃ気になるので続きをお願いします!! (2021年11月27日 17時) (レス) @page36 id: e39657dd30 (このIDを非表示/違反報告)
荒川 - めちゃくちゃ好きです!!!続きをお願いします泣 (2021年10月26日 5時) (レス) id: f6705dec1d (このIDを非表示/違反報告)
inuneko(プロフ) - どうしよう!キュンキュンしすぎて叫び足りないんですけど!好きです!あと10回見てきます!!*\(^o^)/* (2020年2月6日 23時) (レス) id: 8271c7e9a0 (このIDを非表示/違反報告)
うさこ(プロフ) - こんばんは。いのちゃんが山ちゃんを好きになってる感じでニヤニヤしちゃいます。早くいのちゃんが恋に気付くといいなーと思ってます。 (2020年2月6日 23時) (レス) id: 1d86e2ca18 (このIDを非表示/違反報告)
あまなつ(プロフ) - さくさん» コメントありがとうございます。楽しんでいただけてなによりです!これからも更新がんばりますね! (2020年2月6日 22時) (レス) id: 8c441c3d0c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あまなつ | 作成日時:2020年1月5日 12時