オムライス ページ16
*
夕食を食べ終えてテレビをだらだらと観ていると、スマホをいじっていた彼方くんが「ねえ」と私を呼んだ。
ちょいちょいと手招きし、スマホを指さす。画面には動画サイトが表示されていて、彼はどうやら料理の動画を見ているようだった。ふわとろオムライス、か。
「……これが、どうかしたの?」
「めっっっちゃ美味そうじゃない?」
「ああ、そういうね」
チキンライスの上に乗せられたふわふわのオムレツにナイフが入り、切り口からとろとろの卵が溢れ出す。……うん、美味しそうだけど難しそう。
「これ、来週作って頂けないでしょうか」
「……あんまりふわとろにならないかもだけど、それでいいなら」
「よっしゃ、ありがと」
嬉しそうに笑う彼方くん。うう、動画見て勉強しとかないとだ。
*
いつだって、新しいメニューを作る時は緊張するものだ。それがリクエストであればなおのこと。でもしっかり勉強したし、なんとかなる…はず。
まずはチキンライス。玉ねぎ丸1個は荒いみじん切りに、鶏もも肉は1口大に切る。2つをオリーブオイルで炒め、お肉に火が通ったらケチャップ、コンソメ顆粒、塩こしょうで味付けし、水分が飛んだらご飯を投入。こうすればご飯がベチャベチャにならないらしい。
2つの皿にチキンライスを盛り付け、市販のものだけどデミグラスソースも用意した。……卵の準備、するか。
卵にマヨネーズと牛乳を少々、塩こしょうを入れて切るように混ぜる。とにかく混ぜるのがポイントって聞いたけど、ほんとにこれで合ってるのかな……。
「お疲れ〜。もう作ってる?」
「作ってる作ってる。今から卵やるよ」
いつの間にか鍵を開け、彼方くんが部屋に入ってきた。ああ、なんか緊張してきた。
バターを溶かしたフライパンに卵液を流し込み、ぐるぐるかき混ぜる。底が固まったらフライ返しで3分の1くらい卵を折って、オムレツの要領で閉じて、上下ひっくり返して……
「で、できた!これで合ってんの!?」
「分かんないけどそれっぽい!」
整形したチキンライスの上に卵を乗せ、真ん中に包丁を入れる。……おお、なんかぽい感じがする。
オムライスの上にデミグラスソースをたっぷりかけて完成。1個目に作ったのは私のに、2個目の比較的綺麗な方は彼方くんのにしよう。
手を合わせ、スプーンで頬張ると幸せの味がした。
新しいものを作るのは怖いけど、その分成功した時の感動はすごい。次は何に挑戦しようか、考えるだけで頬が緩んだ。
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いつかのだれか。(プロフ) - 執筆お疲れ様でした。料理や登場人物の心理描写が好きで、ずっとお気に入り登録していた作品だったので更新されたこと・完結まで読めたこと、とても嬉しく思います。素敵な小説をありがとうございました。これからもお体に気をつけてお過ごしください🍛 (3月23日 0時) (レス) @page40 id: 0075fb22a2 (このIDを非表示/違反報告)
飛鳥(プロフ) - 少しずつ三崎さんのペースで回復していってください。また三崎さんの素敵な話が見られるのを楽しみに気長に待ってます。 (2020年9月20日 8時) (レス) id: 0edccb8a0c (このIDを非表示/違反報告)
つばさ - 無理せずにゆっくりでもいいので体調を良くしていって下さい! (2020年9月19日 21時) (レス) id: 46296c987b (このIDを非表示/違反報告)
三崎(プロフ) - しおさん» ありがとうございます!無理せず体調を治していきたいと思います◎ (2020年8月23日 19時) (レス) id: 83ba49b51f (このIDを非表示/違反報告)
しお(プロフ) - お知らせありがとうございます、どうか無理せず自分第一で暮らしてくださいね、こちらこそいつも素敵なお話をありがとうございました。早く回復しますように願ってます! (2020年8月23日 17時) (レス) id: 47ac21f61f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:三崎 | 作成日時:2020年3月22日 0時