金曜日、一緒にご飯を食べるだけ。【そらる】

＊ ページ12

＊


壁掛け時計の針は、両方ともまっすぐ上を向いている。結構遅くなっちゃったけど、明日は休みだし別にいいか……私もお酒飲もうかな。


「まふくん、雑炊でいい？」

「あ、はい、ありがとうございます！何か手伝いましょうか？」

「大丈夫だよ、すぐに終わるから。ゆっくり休んでて」


彼方くんは(不本意だけど)私のベッドに寝かせ、ソファの隅に座ったまふくんにはコップ1杯の水を渡した。よし、もう面倒を見なきゃいけない人はいない。


鍋に今朝沸かしたお湯を入れ、沸騰させる。そこに白だしと冷ご飯(念の為3人分)を加え、5分くらい煮込む。その間にネギとカニカマを小さく切る。卵は溶いて、と。


「まふくーん、彼方くん起きたー？」

「いや、全然。起こします？」

「んー……いいよ、寝かせとこ。とりあえず彼方くんの分は用意しないでおく」


カニカマ、ネギを投入し、また軽く煮込んだら溶き卵を流し入れ、少し待ってからかき混ぜる。火を止め、卵がふわふわに固まったら完成。

お椀2つに雑炊を盛って、レンゲと一緒にお盆に乗せて運ぶ。お椀からふわりと湯気が立ち、優しい香りが広がった。うんうん、これだよこれ。

お椀とレンゲをまふくんに手渡し、2人で手を合わせる。そこからはしばらく無言で雑炊を口に運んだ。お腹にじんわりと広がる温かさが気持ちいいし、レンゲをふうふうしながら雑炊を頬張るまふくんもかわいいし。雑炊最高。


「……Aさん、ほんとすごいですね。僕の分までこんなに美味しいもの、ぱぱっと作っちゃうなんて」

「ふふ、ありがと。料理褒められるのは嬉しいなあ」


今度教えて下さい、と目をきらきらさせるまふくんと料理の約束をしていると、寝室に繋がるドアがゆっくりと開いた。


「……あれ、Aとまふまふ？……ここ、どこ」

「おはよ。何寝ぼけてんの、ここ私の部屋。酔っ払い彼方くんのこと、まふくんがわざわざ連れてきてくれたんだよ」

「あはは、そらるさん、おはようございまーす……」


寝起きの先輩を前に、後輩は呆れたような笑みを浮かべる。いや違うな、目が笑ってない。おこかな？


「さっさとお水飲んで、自分の部屋戻ってね。雑炊あるけど食べる？」

「ん、ありがと。……んだよまふまふ、その顔は」

「別に、何でもないですけど」


Aさんはそらるさんのこと甘やかしすぎですよ。

拗ねたような声がぽつりと聞こえたけど、聞こえないふりをした。


なんでそうしたのかは分からないけど。

おにぎり3種→←雑炊

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す