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「あんな楽しそうにケーキ選んどるの、普通に可愛かったし…顔覗き込むのとか、我慢できんもん」


「な、なな…なに言っておりまする」


「んふふ、照れとるのも可愛ええよ」


とことん甘い。
まるで新しいケーキを味見しているかのような、甘さが頭の中を支配する。
へらぁっと笑うゾムくんからの視線に耐えきれなくなって、隠れるようにして、メニュー表を盾に持った。
その間も、ゾムくんの笑い声が聞こえてきて、正直、怒ってやりたい。


「そんなとこ隠れてないで、出ておいでー」


「絶対、いやだ」


「ふーん、じゃ…」


カチッとボタンを押すような音がして、店内にベルが鳴る。


「店員さん来るから、よろしくな?A」


「え、うそっ」


「あ、ほら、向かってきてる」


うそうそ。
どうしよう。

まだ顔に集まった熱は冷める気がしない。
頬を自分の手で包んでみれば、体温の低い手が無理やりに頰を冷やす。
その間にも、コツコツと気配が近づいてきており、正直、引き返して欲しい。
ゾムくんからは、楽しんでいるような雰囲気だけが滲み出ており、本当に意地悪だと思う。


「…ご注文を承ります」


あーぁ、来てしまった…。

頭上から、今度は男性だと思われる店員さんの声が聞こえてきて、息を呑んだ。
顔が赤いこととか、変に思わないかな。とか、変な顔してないかな。とか、いろんな不安はあったが、取り敢えず、ケーキの注文をしていく。
もちろん、ゾムくんからは顔が見えないように、絶妙にメニュー表の位置に配慮して。


「えと、飲み物は…」


そうだった。ゾムくんの聞いてない。

一瞬の沈黙。
店員さんは先程のケーキの注文を伝票に書き終えたのか、ペンを走らせるのをやめて、私の言葉を待つ。
まだ、顔の熱は引かない。


「…飲み物は、ロイヤルミルクティとオレンジジュースでお願いします」


え??


「はい、分かりました。ご注文は以上でよろしかったでしょうか?」


「はい」


ええ??

店員さんの気配が消えて、足音が遠のいていく。注文が終わって、呆然とする私に、ゾムくんはヒョイっとメニュー表を取り上げると、私の顔を覗き込んだ。


「その顔、男なんかに見させるわけないやろ」


「…っ、なら、最初っからキスなんてしなきゃ良かったのに」


「それは、無理〜」


「…そもそも、店員さん呼ばなきゃよかった」


「それは…そう」

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月見(プロフ) - RURUさん» 感想ありがとうございます!もっと、二人の仲を上手く書けるように頑張りますね!(笑) (2021年1月23日 16時) (レス) id: 1f912309a9 (このIDを非表示/違反報告)
RURU - 尊い…(尊死)好k(昇天) (2021年1月14日 16時) (レス) id: 4226f6833e (このIDを非表示/違反報告)
月見(プロフ) - あんこおさん» 感想ありがとうございます!続編も頑張ります!(笑)rdさん了解しました。私も考えていたので、絶対書きます!(笑) (2021年1月14日 0時) (レス) id: 1f912309a9 (このIDを非表示/違反報告)
月見(プロフ) - みかん_(:3」z)_さん» いえいえ!そんなことないです(笑) (2021年1月14日 0時) (レス) id: 1f912309a9 (このIDを非表示/違反報告)
あんこお - もう夢主もZさんも可愛すぎてこっちが昇天します。続編頑張って下さい!!あと、ついでに青いrdさんと絡ませてくれると嬉しいです() (2021年1月11日 19時) (レス) id: 922d9dcc2b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:月見 | 作成日時:2020年12月27日 17時

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