episode30 ページ32
大きく深く、出来る限り肺に空気を送らせるように、息を吸い込んだ。
「Aに、杏寿朗の警備担当地区を引き継いで欲しいと思ってるんだ。勿論、無理にとは言わないし、嫌だったら断ってくれていいんだよ」
お館様からそう言葉を頂いたのは、煉獄さんの訃報が知らされてから2日後のことだった。
『御意』
…正直そんな気はしていた。産屋敷に私一人だけ呼ばれた時から。否、鎹鴉から訃報の知らせを聞かされた時から。
だから心構えも覚悟もできているつもりだったのに。
いざ、煉獄さんの警備担当地区へ来てみれば足が震えていた。
──私なんかに、あの人の代わりなんて出来るわけがない。
こんなにも広大な範囲を、私が守り切れると思うのか。
無理に決まっている。
だって、私は───
そこまで考えてから、頬を思い切り両の手で叩いた。
パチン、と乾いた音が辺りに響く。
やめよう。今、考えるべきことじゃない。
『……どう頑張っても煉獄さんみたいになれるわけじゃない』
自分の、出来ることだけを考えて。
もう一度大きく息を吸い込んで、吐き出す。
きっと、今日から夜がとてつもなく長く感じるのだろう。
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きなこもち(プロフ) - ひかるさん» 観閲ありがとうございます、とっても嬉しいです! (2022年5月8日 19時) (レス) @page50 id: 869b2e483e (このIDを非表示/違反報告)
ひかる(プロフ) - すごく面白いです! (2022年5月8日 15時) (レス) @page25 id: 97f5eb0e61 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - いいさん» いいさん嬉しいお言葉ありがとうございますm(_ _)m。マイペース更新ですが頑張りますのでこれからも見ていただけたら嬉しいです! (2021年10月19日 15時) (レス) id: 8cb9599803 (このIDを非表示/違反報告)
いい - 一瞬で心鷲掴みにされました!応援してます!頑張ってください! (2021年10月17日 9時) (レス) @page47 id: ac051c4e24 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - 凌雲さん» 嬉しいコメントありがとうございます!とても励みになりますm(_ _)m (2021年9月23日 10時) (レス) id: 8cb9599803 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きなこもち | 作成日時:2020年4月5日 17時