冨岡義勇の妹弟子【鬼滅の刃】

episode16 ページ18

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「…何故Aがここにいる」



他の柱及びAよりも数刻遅い時間を伝えられていた義勇が産屋敷に姿を現す。

いつも涼しげで何を考えているかわからないその表情は、Aの姿を捉えた瞬間困惑に、そして眉を潜めて不機嫌そうなものへと変わった。


「ん“ふっ….」


少女は普段“能面”と呼び名がつくほど愛想がないのに兄弟子の事になると人が変わったように顔色がコロコロ変わり。兄弟子は兄弟子で普段は表情筋が死んでいるのかという程に恐ろしく無表情を貫いているのに。互いのこととなると こんなにも分かりやすくなるものか、と笑いを堪えきれなかったしのぶが肩を震わせる。



『……不死川さんが話があるって』


しのぶと同じく義勇の機敏を瞬時に捉えたAが突如そう口を開く。彼女からすれば、この状況を打開する為の助け舟のつもりであったが、日頃から彼らの不仲を知る柱達は、当事者で額に青筋を浮かべる不死川と最初から無関心を貫き通している時透以外の全員が肩を震わせた。


不死川は「前言撤回しろォ」と言わんばかりにAをキツく睨みつける。が、義勇以外の感情の機微に疎いAはまるで気づかない。


そこで助け舟を出したのがもはや完全に蚊帳の外としてこの事態を面白がっているしのぶと宇髄であり、「まぁまぁ」と不死川を宥めながら周りに聞こえないようにそっと耳打ちをする。


「お前、忘れてっかもしんねぇけどこの話を最初に持ちかけたのはお館様だぜ？」

「あの冨岡さんの笑顔を無限に引き出す技を持つAさんが誤情報を流すわけありません。不死川さんが上手く立ち回れば、お館様もきっと喜んでくれますよ」

「……」



お館様の名前を出され、腹を括った不死川は最後にもう一度Aをひと睨みしてから冨岡の方へ体を向けた。


「よ、よお冨岡。今度鮭大根でも、食いに行かねぇかァ」

「行かない」


怒りと嫌悪で震える拳を何とか握りしめ、かなりの覚悟を決めて声をかけた不死川に対し、冨岡はまさかの拒否の声を上げる。しかも即答である。



かくして行われた“冨岡義勇をどうしたら笑わせられるか”を考えた結果の行動は見事失敗に終わり。
不死川と冨岡の間に接触禁止令が出る羽目になった。



それどころか『義勇に謝ってください』と風柱邸に押しかけたAもまた不死川と一悶着あり、兄妹弟子揃って不死川との接触禁止令が発動されたのであった。

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