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episode30 ページ32




『…んっ…』

浮遊感に目を覚ますと見慣れない空間が広がっていた。

白を基調にした天井にぶら下がっている大きなシャンデリアに、上飾りにフリルのあるカーテンが取り付けられた大きな窓。部屋の中央に置かれ猫足のテーブルにはよく知らないが豪華な花が生けてある。
そして今 自分が寝ているのは天蓋付きの、これでもかというくらい大きなベッド。


なんというか、一言で云えば『お嬢様の部屋』



身体を動かさず目だけで状況を確認し、気配で周りに人がいないことを察知してからようやく身体を起こす。

『…なに、ここ?』

記憶の最後にあるのは、Qの悲鳴。それから聞き覚えのある声。

「ごめんね、これも仕事の内なんだ」

そう云った彼──ジョン・スタインベックは私に背後から薬を嗅がせ、意識を失わせた。


となると、此処は組合の所有地か。
でも、だとするとこの待遇はおかしい。通常、地下牢か何処かに鎖で繋いで尋問、処刑を待つか降下に成り下がるか、交渉材料として使われるか、が捕虜の末路。


何故私はこんな、いかにも丁重にもてなしています、みたいな待遇を受けているのだろう。



とりあえず、現状を把握しようとダメ元で扉へ向かう途中、再び私は絶句する。


『……は?』

視界の端に入り込んだ全身鏡。そこに映り込んだ自分の姿に違和感を覚えて目を向ければ、そこにはフリルのついた白いブラウスに赤のリボンタイ、黒のロングスカート、と何処ぞの御令嬢ですかと突っ込みたくなるような服装をした自分がいた。

『……』


これは夢か、と頬をつねってみるものの残念ながら現実らしい。


部屋のドアノブをひねると、簡単に扉が開き、一歩部屋から出てもなにも異変が起きなかったのでもう一度、今度は強めに頬を叩いてみたが結果は変わらず、これは現実だと突きつけられただけだった。


とりあえず部屋を出て、辺りを警戒しながらこの状況について何か情報を得ようとするものの、ホテルのフロアのような空間が続くばかりで誰にもすれ違わない。


設備から考えても、ここが組合の所有地であることに間違いはないだろう。


“組合が狙っているのが敦くんだけとは限らない”



不意に頭をよぎった言葉、そして自分の中に生まれたある仮説に首を振って否定する。

そんなこと、あるわけがないのだ。
組合が人虎くんと共に私自身を欲しているなど


『あるわけ、ない』

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きなこもち(プロフ) - わたあめさん» ブックマンJr.放置していてすみません。最近自分でも迷走しててどこに突っ走っているのかわからなくなり放置状態にしてました。真逆更新待って下さる方がいるとは思わず・・・。でも、とても嬉しいお言葉です!頑張って今月中に更新します!! (2017年8月17日 7時) (レス) id: d6a64bf75c (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ - ごめんなさい!生意気言って,,, (2017年8月16日 21時) (レス) id: 8f5f7e0649 (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ - ブックマンJrの少女も更新して欲しいです!! (2017年8月16日 21時) (レス) id: 8f5f7e0649 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - 赤雲蒼雲さん» 赤雲さん、ありがとうございます!とっても励みになりました!!更新とってもノロノロですが、これからも面白いと思って頂けるよう頑張ります! (2017年4月22日 19時) (レス) id: d6a64bf75c (このIDを非表示/違反報告)
赤雲蒼雲 - 面白かったです!更新頑張ってください! (2017年4月17日 11時) (レス) id: 08e4520087 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きなこもち | 作成日時:2017年1月2日 21時

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