検索窓
今日:12 hit、昨日:135 hit、合計:306,108 hit

episode22 ページ24



薄暗い室内の中で 2人の男女がいた


ひとりは活動資金の横領が露見され処分が決定した男。もうひとりはその男の処分を任された少女。


男の方は額に脂汗を滲ませ この場をなんとか乗り越えようと息を荒くしていた

一方の少女はそんな男の様子を只無表情に見つめるのみ。


「た、頼む…命だけは助けてくれ」

男の必死な形相を見ても 少女の表情は変わらない。寧ろ、“理解できない”とでも云いたげに眉をひそめる。


『…命だけは、ですか』

「横領した金は返す!いや、5倍にして渡してやる!だから…!」

『それになんの意味があるんですか?』


己の言葉を反復した少女に 取りつく島があると思ったのだろう男は目にかすかな希望の色を浮かべた。
が、向けられた視線と冷ややかな言葉に男はすぐに言葉を失う


『例えば。貴方の全財産を押収する代わりとして貴方自身は見逃すとしましょう。でも、此処で逃げられたとして。貴方は二度と日の光は浴びられないし、ましてや此方側にも居場所なんてない。全財産を失った貴方の末路なんて簡単に想像がつきますよね』

「そ、それは…」


態々プライドを捨ててまで命乞いをする価値ってあると思います?


抑揚のない声で少女にそう問いかけられた男は再び言葉を失った。





「…ころして、くれ」




そして、暫くしてから全てを諦めたように
震える声で男はそう云った。



そんな男の肩に、少女は優しく自らの手を置いた


『………さよなら』



少女がぽつりと呟いた次の瞬間には その場に男の姿はない。文字どおり、少女は男を跡形もなく消した(・・・)







『…もしもし、神崎です。──はい。わかりました、すぐ戻ります』


ひと仕事終えた少女の携帯に見計らったかのようなタイミングで掛かってきた電話に応じた彼女は何事もなかったかのように出入り口の方へ足を向ける。…が、ふと 扉に手をかける直前でその足が止まった





『…これで何人目かな』



自分の所属する組織の人間を消したのは。

ただ命じられたという理由で人間を消したのは。

何も感じることなく人間を消したのは。




3秒ほど考えてから、少女は首を横に振った


考えるだけ無駄だと思ったからだ。

自分はただ、言われたとおりのことをするだけ
そこに、意味なんてない。なら、考える必要もない。

そう結論付けた少女は、今度は止まることなくその足を進めた。


少女が慕う姉貴分が捕まったと。
彼女が知ったのはそれから暫くしてからだった

episode23→←episode21



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (287 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
769人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

きなこもち(プロフ) - わたあめさん» ブックマンJr.放置していてすみません。最近自分でも迷走しててどこに突っ走っているのかわからなくなり放置状態にしてました。真逆更新待って下さる方がいるとは思わず・・・。でも、とても嬉しいお言葉です!頑張って今月中に更新します!! (2017年8月17日 7時) (レス) id: d6a64bf75c (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ - ごめんなさい!生意気言って,,, (2017年8月16日 21時) (レス) id: 8f5f7e0649 (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ - ブックマンJrの少女も更新して欲しいです!! (2017年8月16日 21時) (レス) id: 8f5f7e0649 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - 赤雲蒼雲さん» 赤雲さん、ありがとうございます!とっても励みになりました!!更新とってもノロノロですが、これからも面白いと思って頂けるよう頑張ります! (2017年4月22日 19時) (レス) id: d6a64bf75c (このIDを非表示/違反報告)
赤雲蒼雲 - 面白かったです!更新頑張ってください! (2017年4月17日 11時) (レス) id: 08e4520087 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:きなこもち | 作成日時:2017年1月2日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。