中原中也に忠誠を誓った少女【文スト】

episode20 ページ22

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アンとの追いかけっこが始まって数秒たらず

探偵社の1人が捕まった



捕まったのは、この部屋に連れ込まれる前に首領にぶつかった青年。
幻覚の異能持ちの、名を谷崎潤一郎といったか



モンゴメリの目的は探偵社員、そして彼女も人虎君も私達のことを只の一般人だと思ってる、ということもあり 私と首領は部屋の隅で人虎君が アンから逃げ回りながらお仲間が捕まった奥の部屋の扉へ鍵を運ぼうと奮闘しているのをただただ眺めていた。




「なかなかいい動きをしているねぇ、彼。ウチにいたら中々の人材だったのに」

『…それは私に対する皮肉ですか』

「いや？偶然彼と出会ったのと同じ日に入水中の上司の元相棒に遭遇し、人助けを行う彼を残してその場から立ち去ったとしても…。更に云えばその報告を上にしなかったおかげで有能な人材が敵対組織に渡ってしまったとしても。優秀な君を咎めるのはお門違いだからねぇ」

…あれ、私其の話今迄誰にも話していないはずなのだけれども。

『……真逆私にGPS(居場所探知機)付けてます？』


冗談交じりで云った其の言葉に 否定も肯定もされず。ただ意味深の笑みを返された。
人生で二番目くらいに大きな鳥肌が立ったが
私は1ミリたりとも悪くないはずである。



「まぁ、そんなことをしたら紅葉君に怒られちゃうからね。…さて、そろそろ君のお仕事の時間だよ。彼を助けてあげなさい」

『え、嫌ですけど』

にこり、と人当たりの良さそうな笑みを浮かべる首領に抗議の視線を送ること30秒。
───先に折れたのは私だった。



『あー、はいはい。わかりましたよ』

ちっ、と舌打ちをして首領から視線を外せば 敵に背を向け出口の扉へと走りだす人虎君と目が合った。



『何処行くの？』

「僕が勝てる相手じゃなかったんです。こんな過酷な場所、僕が居る資格なんて──」

彼の行手を阻むように扉の前で通せんぼすると 人虎君は悔しそうに己の拳を握りしめた。

『じん…敦君。モンゴメリの言葉を信じるなら、そのドアから逃げれば君は記憶を失うよ。敵の手管も捕らえられた仲間の危機も忘れ、敵は進撃を続ける』

「でも、どうすれば…」

『…佳い事を教えてあげる。絶対に負けぬと高を括る敵ほど容易い相手はいない』


キミが囚われた時、お仲間は必死で助けてくれたのでしょう？今度は貴方の番じゃないの？



彼の瞳に、再び闘志が宿った




私はゆっくりと目を閉じた。


次に目を開けた時、其処は横浜の繁華街に戻っていた。

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