中原中也に忠誠を誓った少女【文スト】

episode11 ページ13

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「嵐の様だったな、彼奴等は」

「何というか…忙しそうでしたね」


ため息をつく俺に 隣で言葉を選びつつも同意見らしい敦は困ったような呆れたような顔をしていた


向かい側の席に既に人はおらず。


いつも通りの穏やかな喫茶へと戻っていた



数分前、突如として鳴った携帯は神崎のものだった


『あ…。すみません、ちょっと失礼しま……って太宰さん！？』


断ってから電話に出ようとした意外と常識人らしい神崎に対し 彼女の隣に座っていた太宰は携帯を素早い動作で奪い取りあろうことか勝手に通話を始めだした


「ーーやぁ、久しぶり。…え？先刻偶然会ってね、楽しくお茶してた所なのだよ」


太宰の耳元にある己の携帯に向かって必死に弁解しようとするも 太宰に口元を手で押さえられ断念に終わった神崎
更に言えば 太宰に煩わしそうな目線を送られる始末である

「ちょっとA煩い。ーーはぁ？何で私が…。はいはいわかったよ、それじゃ」


用件は済んだらしく はい、と何とでもない風に太宰は携帯を持ち主に返した

『嗚呼…めったに向こうから連絡くれることなんてないのに…っ』

一方でその携帯の持ち主といえば悲しみと怒りの混ざったような顔で食べかけの西洋菓子をフォークでぐしゃぐしゃと突き刺していた


正直汚い



「さて…と。それじゃ私この子送ってく事にになったからちょっと行ってくるよ。ほらA立って」

『……』

「早くしないとこの間の件バラシちゃお『はいはい、行きますよ！』」



太宰に何か脅されつつ立ち上がった神崎が此方に会釈したのを見て太宰は彼女の首根っこを掴み 2人は店を出て行ってしまった





ーーーそして今に至るわけだが





「結局お二人の職業分からずじまいですね」

うーん、と頭を抱える敦を見るところ 奴は如何しても太宰の前職兼神崎の現職を中てたいらしい


「敦、世の中知らなくていいこともあるという事を覚えておけ。…にしても、お前が神崎と顔見知りだったとはな」

「河川敷で餓死しそうな所で彼女から綿菓子を頂き助けてもらいました。…まぁ、その後すぐ入水中の太宰さんを発見し助けてたら彼女は居なくなってたんですけど。…そういえば、国木田さんはなぜ“うずまき”に？」


何故って、それはーー


答えようとして 固まった



事務所に引きずり戻すはずの木偶は 数分前少女を引きずり出て行ったではないか。


「…お疲れ様です」


事情を察した敦の哀れんだ声が 抱えた頭の上から聞こえた。

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