16.想い ページ16
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潤が煙草に火をつけるカチッと鳴ったライターの音が、耳の奥まで響いた気がした。
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「…」
潤「俺があの男のこと、哀れむと思った？」
「…いや」
潤「……だから言ったじゃん、俺んとこ戻ってこいって」
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私の言葉を聞いても動揺を一切見せなかった潤は、煙草の煙をゆっくりと吐いた後
私の顔を見て、苦しみに満ちた顔を見せた。
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「…」
潤「悪いね、こんなことしか言えない男で」
「…」
潤「正直、死んだやつにとやかく言うつもりはないけどさ。
…Aと別れることになった時、あいつは言ったよ。
''俺にAを幸せにさせてほしい''って」
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潤「…なのに死ぬとか、意味わかんねーだろ」
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絞り出したように、掠れた声で、そう口にする潤の瞳の奥には、どんな景色が映っているんだろうと思った。
当時、私のことを本当に大切にしてくれていた潤は、同じ大学に通う翔を好きになった私を見て
''絶対俺より幸せになること、これだけ約束して''
そう言葉を紡ぎ、一切涙は見せず、最後まで笑顔で、私の幸せを願っていてくれていた。
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けど、あの時のことを思えば
潤は、笑ってるのに………笑ってなかった。
いや、…笑えてなかった。
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翔の言葉を思い出して、あの時の記憶を辿って、何処か自分のことのように悔やむ姿を見て
あぁ、この人は、昔からこういう人だった。そう思った。
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作者名：星雪 x他1人 | 作成日時：2020年5月8日 1時
