14.ディナーの約束は ページ14
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和「なんだ、そんなことかよ」
面倒くせぇなと言わんばかりに、私から身体を離し煙草に手を伸ばす。
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「そんなことって…」
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和「翔さんが死ぬ1か月くらい前かな。偶然ここの前で会ってさ。俺に行って来たんだよ。ハワイでやる結婚式呼ぶから絶対こいよ。って」
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「え…」
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和「あぁ、あの翔さんもついに結婚かよ…なんて言って、そん時は別れたんだけどさ。」
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和「だから思ったんだよ、結婚式する予定のやつが死ぬか？って」
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「結婚……」
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和「あんたも、思っただろ？挙式の予定まで立ててた彼氏が死ぬなんてあり得ないって」
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「私………聞いてない。」
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私の見ていた世界が、音を立てて崩れていく。
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和「あー俺が翔さんと会ったこと言ってなかったっけ。」
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二宮さんはリモコンをテレビに向けて
面白そうな番組がないかチャンネルを回している。
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「違う……。結婚…の約束、してない…」
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私の言葉の意味を遅れて理解した二宮さんが、怪訝そうな顔をする。
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和「さ、サプライズとかだったんじゃねーの？結婚も式もさ…？」
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二宮さんの声がどこか遠くのもものように感じる。
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「今日はもう…帰ります」
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長い沈黙の後私はそう言って、立ち上がった。
今更お酒の酔いが回ったのか、激しい動揺か、
目の前がぐらぐらと歪む。
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和「これ、俺の携帯番号。まぁ、俺で良ければなんかあったら聞くよ」
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二宮さんなりの優しさなんだろうか。
自分から番号教えるなんかレアだから、と言いながら、皺皺のレシートの裏に書いて渡して来た。
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「ありがとうございます…」
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二宮さんの冗談も返す気にならず、私は二宮さんの家を後にした。
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自分の部屋についてから
何もする気になれず上着を着たままベッドの上に倒れ込んだ。
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結婚？
そんな素振り一瞬も感じなかった。
相葉さんとの関係を知っていたなら尚更…
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サプライズ…
二宮さんの言う通り、命を断とうと思ってる人間が
そんなに膨大なお金をかけるはずがない…
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考えれば考えるほど、激しく切り裂かれたように心が痛む。
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ねぇ、翔。
あの日の朝「少しお洒落なレストランで食事でもしようか」なんて笑っていたけど
いったい何を考えていたの＿＿＿？
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私はいつのまにか、深い闇に沈み込むように深い眠りについていた。
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作者名：星雪 x他1人 | 作成日時：2020年5月8日 1時
