事件4件目 ページ5
出会いは水城さんの買い物のついでだった
一目惚れとは言わない
綺麗な子だと思った程度だ
見回りでケーキ屋の近くに来たものだからと
水城さんが買いに行ってしまう
それに慌てて付いて行った
そこで会った、いや会ったというか
自分が彼女を見ただけであるが
若くてまだ就いてすぐの子だろうと
迷いに迷っている水城さんを見ながら考える
自分も大変だったな
あの子も苦労するだろうな
そんな事を思いながら水城さんと一緒に店を出た
その時の彼女の印象は凛とした印象だった
その印象はすぐに変わってしまうのは知らぬまま
数日後にすみだ署に駆け込んできたのは彼女だった
話を聞くによるとストーカー被害にあっているらしい
偶然にも担当になってしまった
「黒宮Aさん、で合ってますか」
A「はい」
黒宮Aさん
初めて名前を聞いた
彼女の声も初めて
「ストーカー被害という事ですが被害内容はどういった事でしょうか。もちろん答えられる程度で構いませんが」
聞いた内容が少し奇妙だった
帰り道で付けられている、仕事の時や家にいる時の写真をポストに入れられている、不気味な手紙と一緒にプレゼントが届くなど
その話をしている彼女がとても小さく見えて
「怖い思い、されたんですね」
そう行った瞬間俯いていた彼女の顔が
パッと自分を見た
その瞳には涙が今にも溢れそうなほど滲んでいた
その姿を見て
あんなにも凛としていた子が
こんなにも弱い所を見せるのかと思うと
まだ仲良くもなっていないのに
守りたいと愚かに思ってしまった
「必ず、犯人を捕まえてみせます」
震える肩に
警察と被害者という身であるため
まだ彼女に触れることは
手を届かせることは
許されない
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