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______くろねこさんだ。
お嬢は脳裏で呟いた。
夜も更けて、お嬢は布団の中。今夜は渡辺も宮舘も襖の裏に控えている。
______どこに行くの?まって、
赤と青の瞳をした不思議な黒猫はしっぽを揺らして、歩みを進める。この子にお嬢が見えてるのか見えてないのか分からないくらい、気ままなスピードで。
突然、眩しい光が差して、お嬢は思わず目を瞑った。
光にやられてしまった目を渋々と開けば、そこは見慣れぬ景色。夢の中だからだろうか、辺りの線は明確でなく、どこかの家のリビングということだけはっきり分かる。
______ねこさんは、
「猫さん?家ん中にはいねぇよ?」
爽やかで少し高いアノ声。
______「しょうた?」
「そうだけど?え、寝ぼけてんの?」
「そんな言い方ないでしょ、翔太。まだ小さいんだから」
気品があって、重厚感たっぷりの声。
「だて、」
「おはよう、Aちゃん。どうしたのかな?」
お嬢はひどく困惑した。
アノ黒猫がいたのだから、ここは夢だとわかっている。わかっているが、ここまで鮮明な夢を見たのは初めてだ。
二人の姿かたちは変わらないのに、自分への対応が今とまるで違う。
だては、「Aちゃん」なんて絶対呼ばないのに。
「だて、ここどこ?」
「ん?…ここはAちゃんのお家だよ」
「Aのお家、?」
呆然と、オウムのように宮舘の言葉を繰り返す。
お嬢の家はただひとつ、岩本が所有するあの屋敷だけだ。
この部屋は住民が掃除を放棄しすぎている。
置かれた上等そうなピアノもホコリを被っているし、コンビニ食は食べ散らかされ、衣服は積まれている。
お嬢よりも背の高い机の上に、明らかに人の手でゴミを、そこの部分だけくっきりと避けたところがある。
そのうえに、一冊、
「おい、Aさっきから大丈夫か?」
サラサラとした茶色の髪が目の前で揺れた。
青薔薇の咲いている方の腕で、お嬢の頬に触れて顔色を見る。
「わっ、」
「熱ねぇな」
「急に触ったらびっくりするよ」
「わり」
悪気が無さそうに渡辺は謝った。
「翔太、Aちゃんは『9歳』の女の子。優しく丁寧にって照が俺らに任せたんだから」
きゅうさい、?
だて、Aは12歳だよ、あれ?
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霞(プロフ) - takkimakkiさん» 嬉しいコメントありがとうございます!これからも素敵な百合組お届けできるように頑張ります! (2023年1月2日 23時) (レス) id: 15ecf1a3d4 (このIDを非表示/違反報告)
霞(プロフ) - まなみんさん» コメントありがとうございます!励みになります( ¨̮ ) (2023年1月2日 23時) (レス) @page30 id: 15ecf1a3d4 (このIDを非表示/違反報告)
takkimakki(プロフ) - すごく好きなお話です。ころからも楽しみにしています!!百合組、素敵です。 (2022年12月29日 10時) (レス) @page34 id: ff744b84c3 (このIDを非表示/違反報告)
まなみん(プロフ) - 続きが気になります!無理せず更新頑張って下さい! (2022年12月11日 8時) (レス) id: 5b5d40fc7f (このIDを非表示/違反報告)
霞(プロフ) - 雪姫さん» ありがとうございます!マイペースですが、更新頑張ります。 (2022年12月5日 0時) (レス) id: 15ecf1a3d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:霞 | 作成日時:2022年11月30日 1時