. ページ25
.
「めめ元気だよ」
返事をしたきり黙りこくってしまったラウールにお嬢は言う。
「……ほんと、よかった。痩せてない？顔色も良かった？ちゃんとお話出来てた？」
お嬢の一言に安堵したのか、次から次へと質問は止まらない。
目黒を心の底から心配しているのが目に見えて分かる。
「痩せてなかったし、顔色も良かったよ。ご飯ちゃんと食べてる証拠」
「うん」
「Aとちゃんとお話してくれたよ、Aが怖い夢見たって言ったら大丈夫だよって」
「うん」
「……でもこっちに来るのは怖いみたい。すごく身体が震えてた」
「そっか、…僕のこと何か言ってた？」
焦りの混ざったラウールの切実な瞳。身体は自分のコントロールがきいてないみたいにおかしな位置で止まっている。
阿部は少年のそれを哀れむように見た。
「えっと、ラウのことは何も、」
刹那的にラウールはひどく悲しんだ。
しかし瞬時に、いつもの事だと自分に言い聞かせた。
「そうだよねー、ありがとうAちゃん！」
空元気な口調にお嬢が騙されるわけがない。
「……ラウがめめに会いに行ったらダメなの？」
お嬢は詳しい事情を知らないとはいえ、これはまずい、と阿部が焦り出すが、構わないとラウールは阿部を制した。
「ぼくね、蓮くんに見放されちゃったから」
「みはなされる？」
「嫌われちゃったの、僕が悪いから仕方ないんだけどね」
自嘲気味に口角を無理やり上げる。
目は虚ろで光を失い、どこか遠くを見つめている。まるで"蓮くん"という光を失ってしまったかのように。
「ラウール、無理しなくていいんだよ」
「せやで、久々に生で現場に触れて、疲れてるんやわ」
阿部は医師という立場から彼の精神を心配し、向井は仲間という立場から純粋に苦しみから逃れさせようとした。
「Aちゃん、蓮くんはきっと僕の話を二度と聞いてくれないよ」
二人の優しさを見ないふりして、また、ひどく悲しそうに、今度は苦しさも一緒に、吐き出した。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1664人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
霞(プロフ) - takkimakkiさん» 嬉しいコメントありがとうございます！これからも素敵な百合組お届けできるように頑張ります！ (2023年1月2日 23時) (
レス) id: 15ecf1a3d4 (このIDを非表示/違反報告)
霞(プロフ) - まなみんさん» コメントありがとうございます！励みになります( ¨̮ ) (2023年1月2日 23時) (レス) @page30 id: 15ecf1a3d4 (このIDを非表示/違反報告)
takkimakki(プロフ) - すごく好きなお話です。ころからも楽しみにしています！！百合組、素敵です。 (2022年12月29日 10時) (レス) @page34 id: ff744b84c3 (このIDを非表示/違反報告)
まなみん(プロフ) - 続きが気になります！無理せず更新頑張って下さい！ (2022年12月11日 8時) (レス) id: 5b5d40fc7f (このIDを非表示/違反報告)
霞(プロフ) - 雪姫さん» ありがとうございます！マイペースですが、更新頑張ります。 (2022年12月5日 0時) (レス) id: 15ecf1a3d4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：霞 | 作成日時：2022年11月30日 1時
