百合組と、お嬢

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時計の針が12を差す頃、吹雪組のほとんどは目を覚まし出した。調理場はやはり騒がしく、ひと足先に起きていた阿部とお嬢がその中心にいた。



「もう！！！阿部ちゃんは調理器具イジるの禁止言うたやろ！！！？」


喧しい関西弁は今日も声の通りが良い。



「いやぁ、お嬢がお腹空いたって言ったから何か作ってあげようと思って」


「トースターでパン焼こうとしてもぶっ壊すくらいなんやから無理やって！！！」



弁解しようとするも、その努力は虚しい。


阿部は、研究が終わって昨日は快眠できたようでいつもはある目の下の隈は少々治まっているように見てた。




「ごめんねこーじ」


阿部を叱りながらも、ちゃっかりエプロンを着用し始めたその裾をグッと引っ張りながら謝罪。



「え！？お嬢はええんやで！！俺が早く起きんかったんも悪いしな！はよ作るわ、何がええ？」


「んーーとね、あったかいのがいい」


腰をかがめ目線を合わせて、マシンガンのように飛んでくる言葉を華麗に受け止めてお嬢は答える。




「ほんならお味噌汁とおにぎりにしましょか」



向井はニカッと笑い、阿部がちょこんと座っている調理場の隅のスペースにお嬢を同じく座らせて、早速調理に取り掛かった。





「Aお嬢？」

「なぁにべべ」


「昨日はよく眠れた？俺みんな居ないのも朝知って、しかも夜はぐっすり寝ちゃって様子見に行けなくってさ」


頬に肘をつき、首を傾げてお嬢の返答を待つ。




「んーー、怖い夢は見たよ、でもめめが居たからへい「ええ！！？めめ居たん？！こっち来たん！！？」


めめに過剰に反応した向井。
毎度部屋の前にご飯を届けても、返事も何も無く空になった皿を運ぶばかりで寂しいのだろう。




「ちょっと康二は作るのに集中してよ」

「目黒起きてきたんだ？珍しーね」



再び目黒に噛み付いた男が一人。茶髪をぐしゃりと左手でかきながら現れたのは深澤。




その姿にお嬢の身体が一瞬にして強ばる。




「あれ、ふっかおはよう。今日早いね」



「なんか目ぇ覚めたのよ」



阿部はお嬢の変化に目を配りながら、平然と深澤に声をかけた。
彼女は地面を見つめるばかりで一向にそちらを見る気配がない。





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