二十九夜 ページ30
「Aさん……私のためにあんな事して…」
「良いの。礼子の為でもあるし、自分の為でもあったもの」
正直凄くすっきりした。
真逆あんな人だとは思っていなかったけど、人は変わるものなのね。
すると礼子がイヤフォンに手を掛けて、声を聞き始めた。
「…真逆!……えぇ、分かりました」
「…どうかしたの?」
「…実は、昨夜旦那様のところへキッドの予告状が送られてきまして、旦那様が今日付けていらっしゃるビッグジュエルを盗みに来ると……」
……キッドが、
「そして、今会場に現れたと言う報告が。……どう致しますか、Aさん」
真っ直ぐな瞳に見つめられる。
礼子は知っていたんだ……私の気持ちを
もう一度、もう一度だけ目にかかれるなら、私の気持ちだけでも知って欲しい…
あの人に、会いたい…
「…彼に、一目でいいから、会いたいわ…」
薄ら涙のたまった目で礼子を見詰めると、優しく微笑んだ彼女は
「今、会場の方達には避難命令が出ています。今なら会えるかもしれません」
手を引かれ、足早に会場へ向かう。
重い扉を礼子が開けると、そこには……
催眠ガスで眠っている人達。
その中に、美しい白い鳥。
ビッグジュエルを手にした彼が、青い瞳で此方を見詰める。
「…か、いと…」
「…A、」
彼は私の名を呼んで、ふいと顔を逸らした。
そしてそのままその場を去ろうとする。
彼が逃げてしまう、
何も伝えられないまま…
「…待って…!待って、快斗…!」
喉がビリビリと悲鳴を上げるのも気にせずに、大声で呼び止める。
パーティードレスの裾を踏み付けそうになりながら走って、彼を追いかける。
戸惑いが隠せない彼の腕を両手で掴み、引き寄せる。
「…っ、快斗…ま、って…話を聞いて…」
息を整えながら、口から出す言葉を考えていく。
快斗は何も喋らない。
「あの時…ごめんなさい……あんな酷いこと言って、快斗を傷付けてしまった……」
あの時の気持ちを思い出すと、また涙が出て来る。
「…私、快斗が怒って、ああしてもうここへは来ないって言われて……凄く、辛かったの。自分で、大切な人を遠ざけてしまったって……」
快斗はもう、私を見ていない。
誰かが来ないか、入口を見ているだけだ。
「もう、私の言葉は届かないって…わかっているわ…でも、どうしても伝えたい事があるの」
深呼吸する。
「私、」
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シアん。 - 軽く23回咳き込んだに見えてしまった (8月19日 8時) (レス) @page8 id: 2170ff9ae1 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - この小説私得だ…めっちゃ好きー。言葉に表せないくらい好きです!これからもがんばってください! (2019年11月3日 22時) (レス) id: 1eb05cfcac (このIDを非表示/違反報告)
蘇澳(プロフ) - チイナさん» 私の拙い文章にそこまで言ってくださって本当にありがとうございます…!チイナさんのお言葉に感動して涙が出ました…そこまで私の作品を楽しんで下さりありがとうございました!感謝でいっぱいです! (2019年7月24日 19時) (レス) id: e4a4be21c3 (このIDを非表示/違反報告)
チイナ(プロフ) - 完結おめでとうございます。いつも更新されるのを楽しみにしていました。更新されて、すべて読み終わったときに、いつも評価を押してしまうんです。何回も何回も押しました。自分でも笑えてきます。とても良い作品でした。改めて、完結おめでとうございます。 (2019年7月20日 20時) (レス) id: f759a37db1 (このIDを非表示/違反報告)
蘇澳(プロフ) - 雨上がりのcrewさん» そう言って頂いて凄く嬉しいです!ありがとうございます!これからも更新頑張りますのでよろしくお願いします! (2019年6月16日 13時) (レス) id: e4a4be21c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蘇澳 | 作成日時:2019年4月15日 7時