怪盗が通う場所【怪盗キッド】

二十二夜 ページ23

窓から入った日差しに、思わず目を開ける。


「…ん、」


不意に横を見ると、少し体を離して眠っているAの姿。

そうだ、昨日ヘマしてAんとこに世話になったんだ。


腹部に視線を落とすと、綺麗に巻かれた包帯。
少しだけ傷んだ傷が、昨夜のことを思い出させる。


「…真逆こいつが、俺の怪我であんなに怖がるなんてな…」


ふっと笑い、Aの頬を撫でる。


「…早く、気付けよ」


頬へのキスも、抱き締めるのも、お前だけなんだって。


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「…ん、ふぁ」


目を覚ますと、隣に彼は居なかった。

慌てて起き上がり、辺りを見回すと


「はよ、A」

椅子に座って、本を読んでいた彼。
いい具合に大きなシャツが、彼の無防備な鎖骨を露わにしていて色気がある。


「…お、おはよう…」

目を逸らしながら挨拶をすると、何か含んだような笑みを称えて立ち上がる。


「昨夜は、激しい夜だったな？A」


甘い声で変なことを言うものだから、顔が真っ赤になって慌てて言い返す。


「何のことを言ってるの！馬鹿！」


「はははっ…嘘だよ」


「…もう…！…傷はどうなの？」


「お前のお陰で何ともねぇよ」


「それなら良いけど…」


「ありがとな、」


「…別に、何もしてないわ」

大切な人を助けるのは、普通でしょう？

なんて言おうとしたけど、言ったら絶対に調子に乗るから言わない。


そうしたらすっと寄ってきた快斗。


「A、」


後頭部と、右頬に手が回される。


「…え？」


快斗の顔が近付く。

もう少しで鼻がくっ付く所で、ぱっと口元を押さえる。


「…おっと、ガード硬ぇな」


にへらっと笑った彼。

全然笑えない…


どうして、彼はこんな事するの？

私の心を弄んでいるの？


期待させようとしているの？


「何で、キスなんか」


「…んあ？」


「快斗は、どうしてこういう事をするの？」

彼の胸元をぐっと掴んで身を乗り出す。


「私を、抱き締めたり頬にキスしたりフィアンセだなんて言ったりジャケットを貸してくれたり……ねぇ、どうしてなの」


私の事を、どう思っているの？


半分泣きそうになりながら、潤んだ瞳で彼を見詰める。



「…んなの……」


彼の綺麗な手が、私の両頬を包む。

真っ青な熱い瞳に見詰められて、動けない。



「お前、分からねぇか…？」

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